『読売新聞』2007年4月15日付

大学院の閉鎖性にメス、格差拡大の懸念も…再生会議提言


教育再生会議(野依良治座長)が検討している大学・大学院改革の提言素案が、大学関係者に波紋を広げている。同一大学や同一学部からの大学院への進学者(内部進学者)を制限し、大学院を大学と分離して活性化させる案が、「大学の構造を変える過激な内容」と受け止められたためだ。

一方、日本の大学は、教授を頂点とするピラミッド型の「講座制」が続き、閉鎖性による弊害が指摘されていることから、今後、大きな論争になりそうだ。

素案は、大学院の研究強化を目指す野依座長が作成した。大学院が「極めて狭い領域の研究指導に偏っている」とし、主な要因を「学部との連続的な縦割り構造」と、学部4年生の「囲い込み」にあるとした。理工系で大学院生の8割以上が自校出身者で占める現状について、「他大学や他分野に広く門戸が開かれているとは言い難い」と指摘。内部進学者を最大2割程度に制限し、学部生や留学生が自由に大学院を選び、競争できるようにするのが狙いだ。

提言の背景には、日本の大学が「講座制」により、「教官と学生の甘えの構造」を生んでいるとの反省がある。このため、教養教育を担う大学と、専門教育を行う大学院を明確に区別する米国を参考にした。

ただ、内部進学者の制限については、学生から不満が出ることが予想されるほか、大学側からも「時間をかけた人材養成が阻害される」といった批判も出そうだ。また、制限を実施する場合、全国の大学院が十分な情報公開をしないと、学生が適切に進路を選べない可能性もある。人気のある大学院に応募が集中し、大学院間の格差を懸念する声もある。提言は、大学と大学院制度の構造改革と言えるものだけに、効果や問題を十分に検討することが求められる。(橋本潤也)

再生会議の大学・大学院改革の提言素案(骨子)

・大学院に進学する場合、学部3年での卒業・院進学を標準にする

・大学院入試は論文や研究計画書を重視する

・大学院生について、同大学の同一学部出身者(内部進学者)の割合を最大2割程度に制限。外国人学生を2割以上選抜する

・研究者養成、高度職業人養成など分野別に大学院の性格、機能を明確にする