『毎日新聞』長野版2007年4月11日付

模索する大学:全入時代の幕開け/1 信州大 「人気ない学部は不要」


◇オンリーワンで生き残り模索

今年度から突入したとされる「大学全入時代」。志願者数と入学者数が同じとなり、大学は学生を選ぶ立場から選ばれる立場へと変わりつつある。各大学は改革や差別化を掲げ、受験生に個性を強調するなど、入学者確保に向けたさまざまな取り組みを始めている。生き残りをかけた県内の大学の現状を追った。【藤原章博】

「減少傾向にある受験者数の現状を真剣に受け止めてほしい」。信州大(本部・松本市)の入学試験が終了した3月に行われた同大役員会。入試担当者は過去4年間の志願者数などが書かれた資料を配りながら、各学部長ら19人に具体的な対応を求めた。役員の一人は「全入時代への対応が遅すぎた。何もしないで待っている殿様商売から早く脱却しなければ、減少傾向は止まらない」と漏らした。

「学生が集まらない学部は社会が必要としていない」と小宮山淳学長は言う。近年の同大志願者数のピークは03年度の1万361人。07年度は06年度よりも106人増の8222人だが、ある学部はピーク時の半数以下まで減少するなど、同大にも全入時代の波が押し寄せる。

人文学部は今春の前期試験を5教科7科目から、03年まで実施していた3教科3科目に戻した。私立大と同じ科目数になったことで、志願者数は06年の645人(前期395人)を大幅に上回る791人(同594人)だった。渡辺秀夫学部長は「科目数変更の影響が大きかったと思われる。充実した中身で多くの学生を集められるようにしたい」と話す。

同大は、今年1月に県教育委員会と包括連携協定を締結。従来行っていた教師対象のガイダンスに加え、高校生を対象にしたものも初めて実施する。現在、同大への県内出身者は全体の3割に過ぎない。同大入試課は「地元ならば(信大を)知っていると過信していたが、積極的な取り組みで4割まで増やしたい」と話す。

松本市総合体育館で今月6日に行われた信州大の入学式。慣れないスーツ姿が目立つ新入生2230人を前に、小宮山学長は「信大が誇る環境教育で、環境マインドをしっかりとはぐくんでほしい」と述べた。立地条件を生かした信州の環境をキーワードに生き残りをかける。大学にブランドや個性が求められる全入時代。「信大は『オンリーワン』になる必要がある。そのためには何でもしていく」と小宮山学長は強調した。=つづく