『西日本新聞』2007年4月10日付

九大病院プロが広報 企業経験者を来月採用 親しみやすさPR


国立大学の法人化から4年目を迎え、収入をいかに増やすかが課題の九州大学病院(福岡市東区)は、地域における存在感を増し、より多くの患者を呼び込もうと、広報活動に専従する民間企業出身のスタッフを5月に採用することになった。経営改善のために斬新な発想が迫られる一方で、職員のほとんどは元公務員という全国の大学病院のなかでも異色の人事として注目される。

配置する広報担当の専門職員は(1)企業で広報誌を企画したなどの実務経験がある(2)ホームページの管理運営ができる‐ことなどを条件に3月に公募。13人の志願者から、9大出身の40代の女性に決まった。印刷会社で約15年にわたり、書籍の編集などに携わった蓄積が評価された。

広報担当は2005年度から配置していたが、これまでは経験が乏しい職員が担当していたという。

九大病院では、法人化に伴い国からの運営費交付金が05年度以降、以前に比べて年に約4億8000万円減っている。さらに、06年度の診療報酬の減額分を加えると、収入の5%近くにあたる約12億円の減収となり、支出削減も含めた増収策が急務となっている。

ただ地域住民には「紹介状がないと診療を拒否されるのでは」といった旧来の権威主義的なイメージを持つ人も少なくなく、病院幹部は「先端医療への取り組みなど、大学病院の存在意義がなかなか伝わらない」と、もどかしさを感じていた。

今回採用される専門職員は、新聞やテレビの取材対応に加え、ユニークな診療などを多メディアで積極的にPR。「硬くて読みづらい」と不評もあるホームページの刷新にも取り組む。

文部科学省によると、国立大学本体に学外から広報担当者を受け入れる例は東京大や熊本大などであるが、大学病院専属は「あまり例がないのではないか」(国立大学法人支援課)という。水田(すいた)祥代(さちよ)院長は「良いことだけでなく医療事故などの情報も発信して、親しみやすい大学病院のイメージに変えたい」と話している。