『朝日新聞』2007年4月8日付

教員給与、査定で20%増減 再生会議提言へ


政府の教育再生会議は、ほぼ一律だった公立学校教員の給与を査定によって80〜120%の幅で決められるようにし、あらたに「上級教職」をつくるなど、成果を反映させる新制度を提言する方針を固めた。予算を学校の児童・生徒数に応じて配分し、企業や個人が学校に直接寄付できる制度も提言する。道徳教育の強化と並んで、学校現場への競争原理導入という安倍首相の教育改革の二本柱が鮮明になった。

再生会議は、公立学校の義務教育費のうち8割弱が人件費にあてられる現状を重視。「公教育の高コスト構造を見直す」として人材確保法の改正と給与や退職金、年金水準の見直しを求める。

さらに査定の基準作りを提言。現行基準の増減それぞれ20%の幅で給与を決められる制度や、教え方や学級運営に優れた教員を上級教職として処遇する制度を求める。

また、公立学校の統廃合を進め、教職員や経費を削減、浮いた財源を設備や図書の充実、学校独自の取り組みに振り向けられるようにする。学校選択制を拡大して競争を促し、「児童・生徒1人当たりに着目した予算配分」も打ち出す。安倍首相が著書「美しい国へ」で導入に前向きな姿勢を示した教育バウチャー制度の考え方に基づく。

各市町村ごとに教育予算の使われ方を一律の基準で公表する「公教育費マップ」(仮称)の作成も提言。自治体間の競争も促す考えからだ。

また大学教員の給与についても、60歳以上で2割、63歳以上で3割それぞれカットし、実績のある若手に手厚く配分する仕組みを求める。

これら改革案について再生会議は9日の「学校再生分科会」(第1分科会)で議論のたたき台として公表、参院選前の5月にまとめる第2次報告の柱にしたい考えだ。

ただ、再生会議はすでに、子どもの規範意識を向上させる観点から道徳の教科化を打ち出しているが、成績評価の対象にするかどうかなど会議内に異論がある。今回の改革案でも、学校間で予算配分に差をつけ、民間企業が小中の公立校など学校に寄付できるようになると、義務教育課程でも学校間の格差が拡大しかねない。改革の二本の柱とも是非を巡る論議が過熱しそうだ。