『読売新聞』2007年4月7日付

勤労学生通った「夜学」激減、再チャレンジに逆行?


かつて、主に勤労学生が通った大学の夜間学部や昼夜授業が受けられる夜間主コースなどの夜間課程(夜学)が、急速に減少している。少子化による大学全入時代を控え、経営の効率化を急ぐ大学が廃止に踏み切るケースが目立つ。安倍内閣は、社会人が勉強し直す「再チャレンジ」を支援する方針を掲げているが、「夜学減少は支援策に逆行している」との声も上がっている。

文部科学省によると、全国の国公私立大学の夜間課程は、1970年代は夜間学部が主流だったが、勤労学生の減少に伴い、夜間主コースが増えてきた。両方合わせた夜間課程数も99年度以降、ほぼ減少傾向。99年度の104校(全大学中16・7%)は2004年度に100校を割って93校(13・1%)となり、06年度には79校(10・8%)にまで落ち込んだ。

女優の吉永小百合さんらを輩出し、夜学として有名だった早稲田大学第二文学部はこの4月から、第一文学部とともに、「文化構想学部」と新「文学部」に再編され、すでに学生募集を打ち切っている。立命館大産業社会学部の夜間主コースでは、今年1月、最終講義が行われ、作家の水上勉さんらも学んだ二部の流れをくむ「夜学」が、約100年の歴史を閉じた。

国公立でも、今年度から和歌山大経済学部は定員60人の夜間主コースを廃止し、観光学科(定員80人)を新設。横浜国大工学部第二部や岐阜大工学部の夜間主コースも廃止された。

夜学減少について、文科省は、就業形態の変化から、すでにニーズは失われつつあると分析している。清水潔高等教育局長は「社会人が大学院で勉強する傾向も強まり、新しい情報技術(IT)を活用した講義へのニーズも出てきた」と説明する。

国立大学に関しては、04年度の国立大学法人化により、一層の経営効率化が求められていることもある。国立大学協会は「夜間課程は定員割れが常態化し、大学経営を圧迫しかねないため、ニーズの高い他学科に衣替えする傾向がある」と見ている。

現在、国会で審議中の国立大学法人法改正案が成立すれば、今年10月に大阪大と大阪外国語大が統合し、大阪外大の夜間主コースは学生の募集を停止する見込みだ。

3月29日の参院文教科学委員会で、民主党の広中和歌子参院議員は「首相の再チャレンジの精神から言えば、一度、社会に出た人が学校に戻り勉強する時、夜間部が取っつきやすいのではないか」と疑問を投げかけた。