『読売新聞』2007年3月28日付

信州大が独自チャンネル


信州大(長野県松本市)は、大学をもっと身近に感じてもらおうと、昨年10月から地元ケーブルテレビ局の1チャンネルを使って、独自番組の放送を始めた。大学が専用のチャンネルを持つのは全国初。

健康、グルメ…学生が番組制作

「大学全入時代」で競争が激しくなる中、大学の個性をアピールしようと、学生たちが番組作りに試行錯誤しながら取り組んでいる。将来は放送に携わる人材を育成する専門職大学院を設置する構想もある。

番組は、医学部付属病院の医師が出演する市民健康講座などの堅いものから、キャンパス生活や飲食店、音楽の紹介、バラエティーまで内容も様々。地元のテレビ松本ケーブルテレビジョンで、毎日午前10時から午後11時(日曜は午後10時)まで、1日30番組以上が放送されている。

制作は、サークルやゼミを母体に、人文、工学、経済の各学部の学生グループが担当。全員素人だったため、最初は、テレビ局のアナウンサーやカメラマンの指導を受けたり、著作権の取り扱いを学んだりした。

学部によって番組にも個性が出て、「経済は楽しい路線。人文は哲学的。工学はまじめな印象」(信州大広報・情報室)。安くておいしい店を紹介する「ハラペコ☆キッズ!!」では、出演する学生が人気者になった。

図書館館長室などをスタジオに、パソコンで編集作業を行う。15分番組制作にも、撮影に2日間、編集作業に20時間かかるため、徹夜作業も当たり前だ。

新年度から留学生のグループも番組作りに参加。1年生対象の「放送番組制作ゼミナール」も開講する。

ただ、番組を見るには、ケーブルテレビに加入して特別な機材を付ける必要があり、視聴世帯は7000ほどとまだまだ少ない。

番組を制作するサークル「スタジオライズ」代表の畠山克憲さん(29)(人文学部4年)は「自分たちが作る番組より、自分たちが地元テレビの取材を受けてニュースになった時の方が反響が大きかった。ただ、最近は、学生食堂でも番組が見られるようになって徐々に反響も大きくなってきた。学生の身近な興味を大切にしながら、信州や信州大を紹介したい」と話す。

チャンネルを借りる費用は年120万円ほど(1年間は試験期間で無料)。将来は、番組の企画や制作、撮影など放送に携わる人材を育てる専門職大学院を作る構想もある。

信州大の野村彰夫理事(62)(広報担当)は「地方大学も個性が必要。大学をアピールする費用と考えれば安い。放送人材の育成では、実際にチャンネルを持ち、実践しながら学べる利点は大きい」と話す。(杉森純)