《HP紹介:改憲国民投票法案情報センター》

2007年3月26日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局


改憲国民投票法案情報センターが設立され,そのHPが公開されました.アドレスは,http://web.mac.com/volksabstimmung/ です.以下,同センターの設立趣旨を掲載し,紹介に代えます.

++++++++++++++++++++++

改憲国民投票法案情報センター設立趣旨

憲法改正のための手続きを定める国民投票法案が今国会にかかっています。安倍首相は、施政方針演説で「今国会での成立に強く期待する」と述べ、2月26日の自民党役員会ではわざわざ「5月3日の憲法記念日までの成立を目指してほしい」と法案成立に強い意欲を見せ、この審議日程を確保するべく、予算案の採決を強行しました。国民投票法案に危惧を持つ市民の機敏な運動によって、安倍首相の言った5月3日までの法案成立は事実上あきらめられたものの、与党は、依然として今国会での成立には強い執念を燃やしています。

こうした安倍政権の強い圧力を受けて、与党は、何としてでも今国会でこの改憲国民投票法案を通すべく、審議をごり押ししようとしています。しかし、安倍内閣が、改憲のために国民投票法案を通そうとすればするほど、彼らがこれまで言ってきた口実がうそであることが明らかになっています。与党も、またそれに同調してきた民主党も、“国民投票法は決して、改憲を強行するための法律ではない。改憲が是か否かを議論するための手続きを中立的に定めるものであり、この法律は本来もっと早くにできているべきであったのが、国会の怠慢で(=立法不作為)今まで制定されてこなかったのを制定するだけなのだから、憲法改正とは別だ”と繰り返してきました。安倍首相の言説はこれを真っ向から否定するものです。私たちがここで現在の法案を「改憲国民投票法」と呼んでいるのも法案のこうした性格を念頭においてのものです。

こうした改憲国民投票法案は、安倍首相が公約で謳っている任期中の憲法改正を実現するために、その内容においても、憲法改正案の旺盛な議論を封殺して、憲法改正案を通すための党利党略的なものとなっています。現に、いま国会に提出されている国民投票法案は、与党案も、民主党案も、こうしたねらいにそって、いくつかの点で重大な問題を孕んでいます。

第1に、与党案は、憲法改正の是非を議論する市民の運動を抑圧し、市民の口を塞ごうとしています。憲法改正の是非を争う国民投票運動に対する規制は二つの面でなされています。一つは、与党案が、国民投票運動でも中心となって運動することが予想されている教育者や公務員の「地位を利用」した運動を禁止するとしている点です。こうした規制が通るようなことがあれば、公務員や教員の運動に大きな萎縮効果を与えることは必定です。もう一つは、組織による買収や利益誘導を行なうことを処罰する規制です。この「犯罪」は、国民投票法案で新設されたものなので、どのように適用されるかは不明な点がありますが、これが運動の主力をなす「9条の会」のような市民団体、労働組合や政党の運動にむけられたものであることは間違いありません。保守政党と違って、これら運動団体はまさか買収や利益誘導などやらないから大丈夫などと思うのは、これまでの公職選挙法などの運用をみれば、大きな間違いです。たとえば、地域の9条の会が、手作りのケーキを出したり、ギターの演奏を聴かせますよと宣伝したりすることが問題とされるでしょう。

与党案の危険の第2は、市民の運動を規制したうえで、マスコミを使って市民の目や耳に一方的に改憲の宣伝を吹き込む仕掛けをつくっていることです。当初、与党はマスコミによって改憲反対の報道や改憲の危険性が報道されることを警戒し、マスコミ報道を厳しく規制する規定を盛り込んでいました。しかし、そうしたマスコミ規制の規定がマスコミや野党に反対されると、これを引っ込め、むしろマスコミを使って改憲派の宣伝を垂れ流す方針に転換しました。投票日の7日前までは有料広告を野放しにする規定などがそれです。これでは、9条改憲を主張する日本経団連参加の大企業はいくらでもおカネを出して、改憲のスポット広告が流せることになります。こんなことでは、市民が憲法改正の是非を冷静に検討することなど到底望めません。

他にも危険な点はたくさんあります。簡単に指摘しておきましょう。第3は、投票について、最低投票率が設けられていないため、極めて低い投票率でも投票が成立してしまいますから、たとえば投票率が40%であった場合には、国民の2割程度の賛成で、憲法が変えられてしまうことが起こりかねないという問題です。市民の運動が厳しく規制されている状態では、こうした事態は決してあり得ないことではありません。21世紀の日本の行く末を決める憲法の改正が、そんなに少数の意思で決まってよいはずはありません。

第4に、与党案では「過半数」の定義が極めて狭く決められている点も、できるだけ少数の賛成で、改憲案を通そうというねらいにもとづく危険な点です。第5に、憲法改正国民投票の広報のルールを定める「広報協議会」が、憲法改正案を発議する機関である国会につくられ、しかもそのメンバーは、改憲賛成派と反対派が平等に選ばれるのでなく、政党議席数に応じて決められるとされている点です。これでは、犯罪を取り締まろうとする警察や検察官が裁判官を兼ねるようなもので、国民運動や広報の公正さは保障されません。

以上のように与党が提出している改憲国民投票法案には多くの問題点があります。それにもかかわらず、与党は3月22日には公聴会を強行し、いっせい地方選挙の前半戦の終わる4月8日を待って衆院を通過させ、参院審議に持ち込もうとしています。何が何でも今国会で国民投票法を通そうというのです。今国会で法案が通らないような事態になれば、改憲のスケジュールに重大な誤算が生じるからです。しかし、この国民投票法案は、憲法改正の是非について市民の目と耳、口を塞いだまま、改憲案を通してしまおうという、憲法の基本的原則とは真っ向から背反する法案といわねばなりません。憲法改正に反対する人はもちろん、賛成する人も、こんな党利党略的な改憲国民投票法案を許してはならないと思います。

そこで私たちは、今度「改憲国民投票法案情報センター」を立ち上げることにしました。情報センターは、以下のことを行ないます。

第1. 以下のような市民に必要な情報をできるだけ、生の形で提供します。
  改憲国民投票法案の問題点を理解するのに必要なあらゆる情報。
  国会審議の議論の中味や最新の情勢に関する情報。
  国会議員が、国会において法案の問題点を明らかにするのに役立つ情報。

第2. 国会審議が市民の監視の下で行なわれるよう、国会での動きや国会外での運動に関する情報をできるだけすみやかに流します。

市民の皆さんがこの情報センターを大いに活用していただくことを期待します。

++++++++++++++++++++++