『朝日新聞』2007年3月18日付

国立大、競争原理に悲鳴
文科省試算 交付金見直せば校数半減


日本の半分の県から国立大学が姿を消しかねないー。国立大への国の運営費交付金の配分方法について、経済財政諮問会議の民間議員が「競争原理の導入」 を提言したのに対し、文部科学省がこんな試算をまとめた。国立大の危機感を背景に一定の前提を置いて計算したもので、諮問会議側を牽制する狙いがあるとみられる。(増谷文生)
 
発端は、日本経団連の御手洗冨士夫会長ら民間議員4人が2月末の諮問会議に出した提言。運営費交付金が、学生数や設備などに連動して配分されている現状に疑問を投げかけ、配分ルールについて「大学の努力と成果に応じたものに」などとの改革案を示した。

3月上旬に都内であった国立大学協会の総会では、悲鳴に近い訴えが相次いだ。「日本の大学教育がほろびかねない」「地方の大学は抹殺される」

このため文科省は、競争原理を導入した際の各大学の交付金の増減を試算。研究内容や成果に従って配分されている科学研究補助金(科研費)の05年度獲得実績に基づいて計算すると、全87校のうち70校で交付金が減り、うち47校は半分以下となって「経営が成り立たなくなる」(文科省)との結果が出た。国立大がなくなるとされたのは秋田や三重、島根など24県。私立大も少ない地方
が多く、地元大学への道が狭まりかねないとする。

文科省は最近、国立大に対する補助金に「競争的資金」を増やしてきた。科研費のほか、世界的な研究拠点を目指す大学に対する「21世紀COE」などがある。その文科省も運営費交付金については「人件費や光熱費などをまかなう、人間で言えば三度の食事のようなもの」として、大幅な見直しには否定的だ。

諮問会議の民間議員は改革案を6月ごろに閣議決定される「骨太の方針」に盛り込みたい考えだ。今後、国立大側が反発を強めるのは必至で、議論は紛糾し
そうだ。

*文科省試算で国立大の運営費交付金が減る都道府県
1. すべての国立大の交付金が半分以下に減る県
2. 1以外ですべての国立大の交付金が減る道県

1. 青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、埼玉県、山梨県、長野県、富山県、福井県、滋賀県、三重県、和歌山県、鳥取県、島根県、山口県、香川県、高知県、大分県、宮崎県、鹿児島県、佐賀県、沖縄県

2. 北海道、群馬県、神奈川県、静岡県、岐阜県、石川県、岡山県、広島県、徳島県、愛媛県、熊本県、長崎県