『北國新聞』2007年3月15日付

中韓ロに研究拠点 金大、初の海外分室設置 日本海域の環境調査強化


21世紀COEプログラムなど多くの分野で国際的な共同研究を進める金大は、海外での研究拠点となる「分室」を、中国と韓国、ロシアの大学・研究機関に設置する。共同研究の円滑化や留学による若手研究者の育成を図るほか、将来的には学生同士の交流や現地の日本企業との共同セミナーなども展開し、広く海外との交流拠点とする。分室を足掛かりに、国際的な研究機関としての地位確立を目指す狙いだ。

金大が海外に分室を設けるのは初めて。同大が進めてきた21世紀COEプログラムのうち、今年度で終了する「環日本海域の環境計測と長期・短期変動予測」プロジェクトの研究成果の一つとして開設が決まった。

分室が設置されるのは中国科学院大気物理研究所(北京)と釜慶(プギョン)大学(釜山)、ロシア科学アカデミー極東支部(ウラジオストク)。中韓では二月から運営が始まっており、ロシアも新年度初頭からの稼働を予定している。

いずれの分室でも当分の間、プロジェクトに留学生として参加した当地の若手研究者や縁の深い金大の研究者が現地スタッフとして勤務する。

各分室では、このプロジェクトが来年度始まる次段階の「グローバルCOEプログラム」に採択されることを目標に、▽黄砂や大気による化学物質の輸送やその毒性▽放射能を利用しての環境解析▽日本海の重油汚染、などについて引き続き共同研究する。

また、同プロジェクトの事実上の推進母体「自然計測応用研究センター」は、同じ学内組織で文系教官が多く所属する「日本海域研究所」と統合し、新年度から「環日本海域環境研究センター」に改組する。研究には文系理系の枠を超えた知識が必要との考えから両者の関係を強化し、研究者の語学習得や文化教育を支援する。

21世紀COEプログラム拠点リーダーの早川和一教授(大学院自然科学研究科)は「日本海周辺は世界的に見ればごく小さな範囲だが、ここで起きている環境変化は世界一激しい。次段階のプログラムを成功させるためにも海外分室を最大限に活用したい」と話した。