『北海道新聞』2007年3月13日付

人材育成、産学連携 大学・高専で講座 5年で300人目指す


道内のものづくりの中核を担う人材を産学協同で育成する事業が、新年度から室工大を皮切りに道内の大学、高専で始まる。主に社会人を対象とし、技術は鋳物、農業機械、自動車関連技術など。団塊世代の大量退職を迎え、専門技術を円滑に継承すると同時に、中小・零細企業の多い道内製造業の技術水準底上げを図る。主導する北海道経済産業局は向こう五年間で三百人の育成を見込む。

事業名は「産学連携製造中核人材育成事業」。現在、室工大のほか、道工大、北大、帯畜大、北見工大の五大学と釧路高専の計六校が社会人向け教育講座を準備中だ。内容策定には日本製鋼所室蘭製作所(室蘭)、トヨタ自動車北海道(苫小牧)などが現場の立場から助言。大学教授らとともに講師も務める。

このうち、室工大で四月に開講する鋳物技術に関する講座は大学院博士前期(修士)課程のコースとして設定された。初年度は技術者五人が二年間、砂と水で鋳型をつくり環境負荷の小さい新手法「凍結鋳造」や、室工大が国内で初めて製造に成功し、自動車の軽量化に役立つと期待される「薄肉球状黒鉛鋳鉄」などの先端技術を学ぶ。

担当の清水一道・室工大助教授は「研究開発型、技術提案型の技術者を育てて道内製造業の力を高めたい」と話す。受講予定の、廃棄物処理のアール・アンド・イー(登別)エンジニアリング事業部設計部の阿部中・次長は「廃棄物を再資源化する機械の製作に、先端の鋳物技術が生かせれば」と意気込む。

道工大で六月に始まる公開講座では、道内製造業の大半を占める多品種少量の個別受注生産型の工場を総合管理できる人材を養成。北大と帯畜大で五月から開く公開講座では、省力・省エネ型農業機械の開発技術者を育成する。

二○○八年度には苫小牧、函館の両高専でも、同様の講座がスタートする。苫小牧高専では、自動車メーカーが要求する厳しい技術水準を満たせる人材を育成する予定だ。