『朝日新聞』2007年3月7日付

国民投票法案、月内に衆院通過の方針 与党、単独採決も


自民、公明両党は、憲法改正の手続きを定める国民投票法案について与党単独で修正して今国会に提出し、単独採決も視野に入れて今月中の衆院通過をめざす方針を固めた。民主党との共同修正案の提出を模索していたが、民主党が応じない方針に転じたため、与党単独での提出もやむを得ないと判断した。ただ、参院審議は民主党との対決姿勢が鮮明になったことで波乱含みの展開となりそうで、今国会で成立するかどうかは未知数だ。

安倍首相は、参院選で憲法改正を争点にすると明言。憲法記念日の5月3日までの同法案の成立をめざすと表明した。首相の意向も踏まえ、衆院憲法調査特別委員会の中山太郎委員長(自民)は6日、自民党の保岡興治・同委筆頭理事らと協議。民主党の合意を得られなくても、8日に委員会を開き、15日の公聴会開催を決める方針を確認した。

中山氏は公明党の太田代表とも会い、党内調整を要請。同党は共同修正をめざしてきたが、「いたずらに審議を遅らせるわけにいかない」(幹部)と転換。別の幹部は6日、「自民、公明両党で修正案を出す方向になる」と述べた。

民主党は与党との共同修正を断念、与党が提出する修正案にも反対する方針だ。当初、憲法改正が参院選の争点になるのを避けるため、共同修正に向け協議を続けたが、小沢代表が1月、「憲法を争点にしても構わない」と対決路線を打ち出し、ブレーキをかけた。07年度予算案の衆院採決で与野党対立が激化したこともあり、「党内が反対でまとまる環境が整った」(幹部)との判断に傾いた。

与党は、15日の公聴会後に修正案を提出する方針。早ければ23日にも衆院を通過させ、5月3日までに成立させたい考えだ。ただ、参院は法案を審議する特別委員会が設置されたばかりで、一定の審議時間が必要となる。衆院が与党単独採決となった場合、野党が参院での審議入りに反発するのも必至だ。統一地方選や大型連休をはさむため、5月3日までの成立は容易ではない。

参院自民党の片山虎之助幹事長は6日の記者会見で「日程的にはかなり窮屈。5月3日までに成立と衆院が言うのは理解できない」と語った。参院採決がずれ込めば、参院選を控えて最終盤で与野党対決が極まり、国会が緊迫する可能性も出てくる。

与党と民主党の実務者間の修正協議では、投票年齢を民主党が主張した「18歳以上」とすることなどで大筋合意した。ただ、国民投票の対象について憲法改正に限定する与党案に対し、民主党は国政の重要事項も対象にすべきだと主張し、折り合っていなかった。

与党は、これまでの修正協議を踏まえ、投票年齢を18歳以上とする規定など、民主党と合意した内容は基本的に修正案にも盛り込む方針。積み残しになっていた投票テーマは、原案のまま憲法改正に限定する。

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〈キーワード:国民投票法案〉憲法96条は、改正要件として、衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成で発議し、さらに国民投票で過半数が賛成することと定めている。ただ、国民投票の仕組みについては具体的な規定がなく、その手続きを定めるため、与党と民主党は昨年5月、それぞれ独自の法案を提出した。投票年齢や投票用紙への記載方法、運動が禁止される公務員の範囲などを規定している。