『産経新聞』2007年3月7日付

飛び入学の拡大見送り 導入6大学のみ「評価段階にない」 文科省有識者会議


大学の「飛び入学」制度のあり方を検討してきた文部科学省の有識者会議(座長・丹保憲仁放送大学長)は6日、高校2年生(17歳)に限定している年齢制限撤廃を見送る報告書案をまとめた。6大学しか導入していない現状を踏まえ、「評価できる段階にない。当面は現行制度の積極的活用が適当」と理由を示した。高校関係者にも意見を聴き、月内に正式決定する。

「特に優れた資質」を有する優秀な生徒を大学に早期入学させる「飛び入学」の年齢制限撤廃は平成12年、政府の教育改革国民会議が「一律主義を改め、個性を伸ばす教育システム」の一つとして提言した。塩崎恭久官房長官は今年1月、都内の講演で「チャレンジできる仕組みがまだ足らない」と前向きな意向を示していた。

この日検討された報告書案では、生徒の人格的成長を妨げ、受験競争の低年齢化を招き、受験エリート化を助長するとの懸念を指摘。「広く一般の生徒を対象とする社会的合意形成はない」として見送る意向を示した。

米、仏、独、中などでは年齢による大学入学制限がなく、飛び入学が普及している。

国内では9年7月の学校教育法施行規則の一部改正を受けて、10年4月から千葉大が始めたが、18年度までに追随したのは5大学しかない。

報告書案では普及しない原因については、効果が不明確▽必要がない▽年齢に基づく「公平性」「平等性」の考え方▽飛び級文化に慣れていない−などを挙げた。

文科省が大学に行った調査では、飛び入学者に求められる「特に優れた資質」を判断する選抜方法や校長推薦の仕方が難しいことや、法令で大学側に求められている指導体制整備の煩雑さを参入障壁ととらえる意見が多かった。

これを踏まえて、報告書案では、選抜方法や指導体制の柔軟化を提言。大学や高校の負担感を軽減することで現行制度の普及を図るよう求めた。