『北海道新聞』2007年3月4日付

全国の大学 「観光学科」相次ぐ新設 学生集めの呼び水に 定員倍増、争奪戦も


全国の大学で観光関連の学部・学科の新設が相次いでいる。国や地方自治体が観光振興の旗を振る中で、将来性ある観光産業に職を求める学生が増えるのを見込み、各大学とも特色ある専門教育をアピールする。学部・学科の“新設”を売りにする大学が増えるのに伴って、学生集めに苦労する大学も出始めるなど、学生の争奪戦も一段と激しさを増している。(東京政経部 升田一憲)

「予想以上の学生が応募してくれた」。和歌山大の小畑力人理事は満足げに話す。今春、経済学部に新設する観光学科には、定員八十人に道内からの三人を含め全国から六百八十人の志願者が集まった。「経営学の視点に立って、観光で地域に貢献できる学生を育てたい」と意気込む。

和歌山大以外に今春、観光関連の学部・学科を開設するのは玉川大(東京)や長野大など計五大学。このほか、北大は国立大では初めて大学院に観光創造専攻を新設し、観光による地域振興や観光政策などを担う人材の育成に乗り出す。

日本での観光関連の学部・学科は、一九六七年に立教大が社会学部に観光学科(現観光学部)を設けたのが最初。九 ○年代前半まで同関連の学部・学科を持つのは五大学にとどまっていたが、同年代後半から増え始め、三十大学を超えるまでになった。国土交通省などによると、二○○七年度にはそうした学部・学科の定員は合わせて三千五百七十人と、二○○○年度の約二倍に膨らむ。

日本を訪れる外国人観光客の倍増を目指す国の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」をはじめ、地方自治体などは地域振興策として観光に力を入れている。旅行会社や航空会社など、観光関連業界への学生の就職希望も根強い。また、規制緩和で○四年度から、学部・学科の新設が文部科学省への認可申請から届け出に変わり、大学側は観光関連学部・学科の新設を学生集めの武器ととらえている。

以前は観光を学問と見なさない風潮があったが今では大学側も「社会や学生の要請に応える必要がある」(玉川大の川野秀之経営学部長)と時代のニーズを強調する。

大学は、新設学部・学科での特色づくりにも懸命だ。首都大学東京は来春、観光と自然ツーリズムを学ぶコースを都市環境学部に設ける。文・理系の両方の視点から「観光業界を代表する人材を供給したい」(井上晴夫都市環境学部長)と意欲的。大阪観光大はホテルやリゾート施設などでの実習教育にも力を入れる。

関連学部・学科の新設が相次いだ結果、学生の獲得に苦労する大学も出てきた。岡山商科大は定員割れに伴い、○五年度から国際観光学科の募集を中止し、コース制に変更した。「宣伝もしたが、学生の要望が少なかった」と担当者。首都圏のある私大も「競合大学が増えるたびに志願者が減る」と、競争激化に神経をとがらせている。