『読売新聞』2007年3月2日付

神戸大大学院、国際協力のプロ育成


神戸大大学院の国際協力研究科が、国際協力の専門家養成のための新たな教育プログラムを今春、スタートさせる。修士・博士両課程を併せた5年計画でじっくり院生を育てる試みで、発展途上国などへの留学も組み込まれている。

一貫5年途上国へ留学も

名称は、「サンドイッチ・プログラム」。1年目に国際法や現地調査法などの基礎を学び、その後、1、2年間留学。帰国後、論文をまとめる。留学を真ん中にはさむのでこの名称がついた。修士課程と博士課程の壁をなくし、修士課程時代から博士課程の講義も受講できるよう、カリキュラムを工夫している。

「これまでは修士、博士課程がそれぞれ独立し、どちらも中途半端なまま終わることも多かった。海外留学のチャンスも大幅に増やし、一貫したテーマ研究に現場での実体験を加え、10年、20年の長い目で見て世界に通用する人材を育てたい」。同研究科長の太田博史教授は意義を強調する。

新プログラムの導入は2005年春に決まり、その後、途上国を中心とする海外の大学や国際機関と交流協定の締結を進めてきた。タンザニアやインドネシアなどの8大学、国連開発計画(UNDP)カンボジア事務所など海外4機関、アジア防災センター(神戸市)など国内3機関と協定を新たに締結。こうした動きが始まる前から協定を交わしていた相手を含めると、協定先は海外13か国を含む19大学・機関に上る。

2月9日には海外の協定先関係者らをまじえた国際シンポジウムを開催。院生のパネル展示も行った。

協定締結に伴う相手国の調査などで、延べ17人の院生が既に9か国を訪れた。

昨夏、インドの小学校で教育支援をしている現地NGOの活動を視察した修士課程1年の重延直子さん(23)は、地面に座って授業を受ける公立校と、スクールバスの送迎まであるNGOの設立校との格差に衝撃を受けた。「途上国の現状を目の当たりにして、将来、国際協力に関係する仕事に就きたいと改めて思った」と話す。

修士課程1年の髭(ひげ)晃子さんは昨夏、インドネシアの小中学校で、初等教育の地域間格差をテーマに調査を行った。「相手国の実情に合わせて質問項目を変えるなど、教室で学んだ調査手法の応用が大切だと実感した」と振り返った。

現地で受ける様々な刺激を糧に、院生たちは国際協力への思いを新たにしている。

(塩川浩志)