『読売新聞』2007年2月26日付

国立大も奨学金、23校で優遇制度


成績優秀な学生に奨学金を支給したり、授業料を免除したりする国立大が増えている。

「全入時代」優秀な学生にアピール

大学独自の優遇制度は私立大の専売特許だったが、国立大も2004年の法人化を機に取り組み始めた。北海道大やお茶の水女子大のほか、新年度からは一橋大もスタートするなど、この3年間に制度を設けた大学は83校(大学院大を除く)のうち23校に上る。「大学全入時代」で大学間競争が激化するなか、学生の勉学意欲を高め、優秀な学生の確保へアピール材料にする狙いがある。

一橋大は「1人当たりの奨学金支給額では国立で最高クラス」を自任する。寄付を積み立てる04年創設の基金が財源。全4学部の2〜4年の各学年から1人ずつ計12人を選び、月8万円を1年間(計96万円)支給する。大学は「こうした制度の創設でより優秀な学生が集められれば」と期待する。

北海道大は卒業生の新渡戸稲造博士にちなんで「北海道大学新渡戸賞」の名称で、20万円の奨学金を支給する制度を05年度に創設。1年次の成績優秀者が対象で、2年次だけ受け取れる。06年度は91人が受け取った。

一方、お茶の水女子大も05年度、「成績優秀者奨学金」を作った。条件は「入学時に特に成績が優秀であると認められた者」で、20人が対象になる。

大阪大が05年度に始めたのは「教養教育奨学金」。2年生前期までの成績が対象で、1年目は応募415人のうち46人、2年目は242人のうち49人に各20万円を支給した。高杉英一・大学教育実践センター長は「専門課程に進む前に、幅広い科目を一生懸命学ぶことが大事。学生の意欲を奨学金という形で刺激したい」と説明している。

山梨大、島根大、香川大などでは06年度から、成績上位者の授業料を一部または全額免除する制度をスタートさせた。

こうした制度を国立大が次々と導入している背景には、法人化で予算の裁量権が広がったこともある。奨学金の費用や授業料免除による減収分を予算のやりくりで捻出(ねんしゅつ)することが可能になったからだ。

一方、大手予備校・河合塾によると、私立大では561校のうち約3分の2の371校に入試の高得点者らへの特待生制度がある。

河合塾教育研究部の神戸悟チーフは「国立大同士や有力私大との競争で、国立大も学生募集、優秀な学生の育成を重視するようになった。成績優秀者に対する優遇制度は今後も増えるだろう」としている。