『朝日新聞』2007年2月15日付

教育再生会議案に規制改革会議から異論 「分権に逆行」


政府の規制改革会議(首相の諮問機関、議長・草刈隆郎日本郵船会長)は14日、教育再生会議の教育委員会改革案について、文部科学省の権限が拡大しないよう求める意見書をまとめた。15日にも公表する。文科相の教委に対する「是正の指示」や教委の第三者評価機関の設置に関し、再生会議案では地方分権に逆行しかねないと強い懸念を示している。安倍首相が重視する教育改革をめぐって足もとで意見が割れている状況で、首相が今国会への早期提出を目指す教育関連3法案の作成作業にも影響を与えそうだ。

教育再生会議が5日公表した教委改革案は教委の事務処理が法令に違反したり、教育本来の目的達成を阻害していると認められたりした場合、文科相が「是正のための勧告」や「是正の指示」をできるよう法改正を提言した。これに対し、規制改革会議の意見書は「文科省による裁量行政的な上意下達システムの弊害を助長することがあっては断じてならない」と指摘、文科省の権限拡大に強い懸念を示した。

また再生会議案が、都道府県教委や政令指定都市教委を「第三者評価」する仕組みとして「国の独立行政法人を活用することなどを含め、引き続き検討する」としたことについて、意見書は「所管省庁の関連組織への委託は第三者評価たりえない」と指摘した。

文科省は、再生会議の第1次報告や教委改革案を受け、文科相の諮問機関の中央教育審議会への諮問・答申を経て、地方教育行政法改正案など教育関連3法案の作成に入る方針だ。安倍首相は今国会に同法案を提出する意向を示しており、伊吹文科相は中教審に対し、2月中か3月上旬までの約1カ月の集中審議で答申するよう要請した。

ただ、再生会議の教委改革案については全国知事会など地方団体からも「国の教委に対する統制を強化し、地方分権一括法改正前の教育行政に後戻りさせかねないもので、受け入れられない」とする申入書が政府に提出された。規制改革会議が文科省の権限拡大を強く牽制(けんせい)したことで、法案の軌道修正を余儀なくされる可能性もある。

もともと規制改革会議は、前身の規制改革・民間開放推進会議でも教委改革に取り組み、小泉政権下だった昨年7月末、教委の権限を首長に移すために設置義務の撤廃を主張するなど、「分権色」の強い中間答申をまとめていた。

だが、安倍政権となった昨年末の最終答申の取りまとめでは、文科省側が難色を示したことなどから「(教委制度の抜本改革を行うと明記した)『骨太の方針』や教育再生会議の意見も踏まえて法改正を行う」との表現に落ち着いた経緯がある。