『毎日新聞』2007年2月5日付

医師派遣:地域の基幹病院へ重点配置 阪大が集約化検討


医師不足が深刻化する中、大阪大医学部(大阪府吹田市)が、関連病院に広く医師を派遣していたこれまでの方式を改め、地域ごとに決めた基幹病院へ医師を重点配置する構想を検討していることが分かった。モデルケースとして来年度から、大阪府豊中市や箕面市など北摂地域で実施し、その後、府内の他地域に広げる方針。若手医師に対する教育の充実などを図る狙いだが、全国に約200カ所ある関連病院を、将来的には20カ所程度の基幹病院に絞る見通しで、自治体病院などで医師不足が加速する恐れもある。

大阪大医学部は従来、医局から自治体病院などに医師を派遣していた。しかし、研修する病院を自由に選べる「新医師臨床研修制度」が04年に始まり、学部を卒業したばかりの研修医が医局に入局しなくなるなど、医師不足に陥った。その結果、従来通り関連病院に広く医師を派遣する体制を今後も同様に維持することは困難と判断した。

構想では、府内の大阪市以外の地域を「北摂」「泉州」「河内」などに分割。各科に特色のある病院を基幹病院として選び出し、医師を重点配置する。派遣先の関連病院を絞ることで、派遣する医師の数は、例えば産婦人科の場合、これまでの1カ所3〜4人から、8人程度に増やす。派遣する医師の負担を軽減できるほか、関連病院での若手医師に対する専門教育の充実が図れるという。

関連病院との渉外担当を務める大阪大医学部の杉本寿教授(救急医学)は「大学が地域医療を守るという重要性は認識しているが、医師不足が深刻化する中、どの診療科も医師の派遣は難しくなっている。若手医師を育成し、過重労働による医師の病院離れを防ぐためにも、今後は、関連病院を絞り、医師の集約化を進めざるを得ない」と説明している。【河内敏康】