『中日新聞』2007年2月2日付

「医師確保 県が新制度」 全国の医学生対象に奨学金


静岡県内で医師不足が慢性化している問題で、県は二〇〇七年度から、院外研修助成事業と、全国の医学生を対象にした奨学金制度を二本立てでスタートさせる。技術水準を上げて医療環境の魅力を高め、奨学金との相乗効果で県外からの人材確保を狙う。研修助成について、県は「全国の都道府県でも例がないのでは」としている。

県によると、院外研修助成事業は、国内外の病院や研究機関で高度な研修を受ける現役医師を対象に、研修費用の二分の一、一人当たり最大四百万円を助成する。初年度は県内の三病院を想定している。

奨学金は、国内の大学医学部か医科大に在籍していれば、県出身者でなくても受けられる。貸与額は在学中に月額二十万円。卒業後に県内の医療機関で貸与を受けた期間の一・五倍以上を勤務すれば、返済は免除する。初年度は五人を予定している。同様の奨学金は三重や長野など二十六県が取り入れている。

院外研修助成事業と奨学金制度の運営費を含む医師確保対策事業費を、〇七年度当初予算案では前年度当初の約七倍に当たる一億九千万円計上する。県は〇五年度から、県立病院での研修医受け入れ枠を拡大するなど医師確保対策を取ってきたが、医師の増員には直接は結び付いていない。

県によると、県内の人口十万人当たり医師数は百七十二人(〇四年十二月末現在)で、全国平均の二百人を大幅に下回る。特に産婦人科と小児科が深刻で、二〇〇〇年以降、産婦人科は浜松労災病院(浜松市)など三病院、小児科も三島社会保険病院(三島市)など三病院が廃止した。

小児科医が不足している袋井市立袋井市民病院に三月末まで、県立こども病院の医師を派遣するなど緊急対応を迫られているのが現状だ。県健康福祉部は「研修助成や奨学金で体質強化を図り、中長期的に医師不足を解消していきたい」としている。