『産経新聞』2007年2月2日付

千葉県が破格の奨学金創設へ 私大医学生対象、3200万円


深刻化する過疎地での医師不足に対応するため、千葉県が私立大学の医学生を対象に、1人当たり在学6年間で総額3200万円を上限とする奨学金制度を創設することが1日、分かった。協定を結んだ東京都内の私立大医学部、医大の受験生に「地域枠」を設けて奨学生を募集。卒業後、県内の医療機関に7〜9年間勤務すれば奨学金の返還を免除する。県外の大学に地域枠を設定するのは全国でも初めてで、これほど高額の奨学金も異例という。(名古屋和希)

千葉県の計画では、県内に付属病院を持つ東京慈恵会医科大学、東京女子医科大学、日本医科大学など6大学のうち2大学と協定を締結。来年以降の入学生を対象に毎年各大学2人、計4人分の奨学金を大学を通じて医学生に貸与する。

大学側は地域枠を設けて受験生を募集し、県が資格審査を行って対象となる受験生を決める。入学金が必要な初年度は700万円、2年次以降は年間500万円を限度額とし、奨学金を出す。協定を結んだ6大学の在学6年間の平均授業料総額は3300万円程度なので、県からの奨学金で学費の大半をまかなえることになる。

奨学生は臨床研修後に小児科と産科は7年間、それ以外は9年間、医師不足に悩む県内の自治体病院に勤務すると奨学金の返還が免除される。県は地域医療医師養成事業として19年度予算案に3100万円を計上した。

入試に地域枠を設けた奨学金制度は兵庫、岩手両県が県内の私立医大を対象に導入している。このほか、青森県や宮城県などでは県内外の医大生を対象に年間数十万〜240万円程度の奨学金を交付しているが、授業料を全額まかなえるまでにはなっていない。

また、これらの県では都市部の方が先進的な医療技術を習得しやすいとして、奨学生が卒業時に奨学金を返還し、医師が不足する地域で勤務しないケースも少なくなかった。千葉県は奨学生の卒業後のプログラムにも工夫を凝らし、勤務後の数年間は都市部の大学病院での研修を取り入れ、先端技術を学べるようにするという。