http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu6/toushin/07011909/001.pdf

第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビューについて
(報 告)
平成19年1月15日 科学技術・学術審議会 測地学分科会


(抜粋)

(略)

U. 第7次火山噴火予知計画の実施状況
3.火山噴火予知体制の整備
(5)評価と課題
@火山噴火予知体制の機能強化

(略)
(ウ)観測体制が十分に整備されていない施設で設置された研究協力支援部門は、研究体制を充実させる上で重要であった。しかし、今後の財政的な支援に問題が残るなど根本的な解決策とは言えない。また、大学では、活発な活動が続く桜島などを共同利用のフィールドラボラトリーと位置付け、共同研究を多数実施してきたが、法人化後に進行中の教員や技術職員の削減が今後も継続すると共同利用のフィールドラボラトリーとしての機能が果たせなくなる蓋然性が高い。大学における火山噴火予知体制の機能強化のため、研究者や技術者の確保は重要であるが、本計画期間中に人員の確保がされず、今後の体制強化に向けた各大学内での取り組みや新たな枠組みの構築などによる人員確保が必要である。

(エ)これまでは社会人入学制度の活用も含め、博士課程学生の確保ができた。しかし、最近は、学部での火山学教育が十分に行われていないことや、学位取得後の就職が困難なことなどから、火山学を志望する大学院生が少ない状況が続いている。今後の研究活性化のために、学生の確保に努める必要がある。また、今後も社会人入学制度等を活用しての関係機関の職員の受け入れよって、火山活動の監視・評価技術等の向上を図る必要がある。

(略)

V.第7次火山噴火予知計画に対する総括的評価
4.総括的評価

 本計画によって、火山噴火予知に関する観測研究の成果は順調にあがってきた。例えば、富士山では、集中総合観測と火山体構造探査の連携や科学技術振興調整費による総合的な調査研究により、浅部から深部に至る火山体の構造や詳細な火山活動史が明らかになった。
 また、三宅島の活動観測を通して、種々の新たな火山ガスの観測手法が開発され、2004 年浅間山噴火でも活用された。浅間山噴火では、多項目の観測により、噴火に至る長期的な活動の変化や噴火直前の前駆的変動を把握できることが確認された。
 しかし、火山噴火予知の実用化を更に進めるためには、研究者の増員を含めた観測研究の強化や、観測技術の改善など新たな投資がなければ実現不可能な課題が山積していることも明らかになった。本計画で当初予定された研究の中には予算の裏づけがなかったために実現できなかった課題も多い。これらのことは火山噴火予知研究を取り巻く社会的状況の変化が影響しており、これまでの計画の推進方法を見直す必要もある。
 第6次計画の最終段階で行われた地質調査所(現 産業技術総合研究所)、防災科学技術研究所などの国立研究機関の独立行政法人化につづき、本計画の開始時には、基礎研究の中核的機関として機能してきた国立大学の法人化も行われた。法人化と同時に進行しつつある運営費交付金の年次的な削減は、これまでの公務員定員削減を上回るペースでの定常的な人員削減と着実な研究費削減として定着しつつあり、企業等からの外部資金の導入が困難な火山観測研究の分野では、近い将来、観測研究の縮小を余儀なくされるであろうことが危惧される。現実に、火山噴火予知計画で整備された大学の観測網、データ伝送装置の老朽化は著しいが、更新のめどは立っておらず、課題とされている観測研究の強化を行うことは、極めて困難な状況にある。
 一方、中央防災会議で火山情報が防災対策の起点として明確に位置付けられるなど、火山情報に適応した防災対策の検討が行われるようになってきた。このことは、より高度で正確な火山情報への期待が増していることを意味する。より高度で正確な火山情報を発信するためには、観測研究を強化し基礎研究を推進することによって、火山噴火予知研究を更に高度化する必要がある。
 大学等では、第3次計画以降、観測井や観測坑道を用いた地震・地殻変動データの高品位化により、火山噴火予知研究の高度化を図ってきた。気象庁は、これまで独自の観測点を整備するとともに、大学等からの高品位データの分岐を受けて、監視観測を強化してきた。
 しかしながら、今後、大学等における常時連続観測の維持・強化が困難な状況が予想される以上、大学等からのデータ分岐に頼った監視観測では現在の火山監視能力のレベルを維持することすら危ぶまれる。このように大学等の法人化による火山噴火予知体制の弱体化が予想される状況では、監視観測を強化し、観測研究を含む基礎研究を推進するためには、観測やそれを取り巻く火山噴火予知体制の組織的・抜本的見直しが不可欠である。

(略)