http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu6/toushin/07011910/001.pdf

地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて
(報 告)
平成19年1月15日 科学技術・学術審議会 測地学分科会


(抜粋)

W.実施状況、成果及び今後の展望
4.計画推進のための体制の整備
4.1.実施状況及び成果
(1)計画を一層効果的に推進する体制の整備

(略)

 平成16 年度からの国立大学の法人化後、各大学では、成果の積極的な公表を図るなど法人化の良い面が現れている。しかし、独立性の増した各大学法人であっても、連携して建議の研究計画を遂行する必要があり、そのための根拠として関係大学の部局間で協定を締結した。当面、特別教育研究経費として地震予知事業費は確保されているものの、各大学の観測施設経費は、各大学の運営費交付金の内数となり、大学内での予算削減が進みつつある。また、特別設備費が交付されないため、各大学の観測器機の老朽化・陳腐化が進み深刻な事態を迎えつつある。さらに、人員の削減も大きな問題となっている。

(略)

(4)人材の養成と確保
 大学では、大学院学生及び学部学生の教育を行い後継研究者と技術者の育成を行い、関係機関や民間企業等へ人材を供給している。さらに、高校生や学部学生に対し、研究所、関係センター、大学院研究科、学部研究室等の公開や出張授業を行うなど積極的な人材発掘を図っている。各機関は、地震関連の教育を受けた人材の採用や、職員に対する研修を実施するなど、観測研究に従事する人材の養成・確保に努めている。

(略)

4.2.今後の展望
(1)計画を一層効果的に推進する体制の整備

 観測研究計画推進委員会は、設置後3年目ではあるが、各機関の密接な協力・連携を図るという機能を十分に果たしている。このような機能は長期継続することにより、次第に綿密な連携がなされていくため、適切な委員の人選に留意しつつ、今後も継続的に運営していく必要がある。国立大学法人化後も、部局間協定などにより連携は強化されたものの、予算や人員面では厳しい状態が続いている。各大学内での予算や技術職員などの人員の更なる確保が必要であるとともに、急速な老朽化・陳腐化が懸念される観測設備の維持・更新充実が急務である。

(略)

(4)人材の養成と確保
 大学においては、大学院生などの人材養成が積極的に行われているものの、十分な数の大学院生を確保できていない大学もある。また、学生が博士号を取得した後、任期制の研究職に就いても、その任期終了後に身分の安定した職を得ることが難しく、優秀な学生が博士課程への進学に躊躇する原因ともなっている。このように人材養成に関しては、大学院教育だけではなく、終了後の進路やキャリアパスの確保にも質と量のバランスを考慮する必要がある。

(略)

X.総括的評価
3.今後の展望

(略)

(国立大学法人の連携強化と観測体制整備)
 国立大学が法人化したことにより、各大学の独自性が強まり競争的な研究環境となり、ボトムアップ型の基礎研究が活性化する可能性が広がった。一方、地震予知のための観測研究の推進のためには、これまでと同様、各大学及び観測・研究機関の連携・協力は必須である。各大学の地震予知関連観測研究センターは、各機関における研究の独自性を活かしつつ、地震予知のための新たな観測研究を推進する全国的組織の一部として位置付ける必要がある。さらに、火山噴火予知研究との連携の強化も重要である。その意味で、全国共同利用研究所の役割はこれまで以上に重要なものとなる。このような考えに基づいて、大学の地震予知研究協議会が地震・火山噴火予知研究協議会に改組され、地震予知研究と火山噴火予知研究の一層の連携強化が図られた。今後は、同協議会の機能の継続、発展が期待される。また、同協議会の活動を通じて、大学の観測設備の機能維持・拡充のために、老朽化した設備、例えば、機動的地震観測に必要な衛星テレメータ装置等の更新を図る必要がある。

(人材の育成)
 地震予知のための観測研究では、長期間にわたって、観測研究と観測業務を推進して行くことが必要であり、大学及び関係機関は後継研究者と技術者の育成を行いながら計画を推進して行くことが重要である。特に、各大学の地震予知関連観測研究センターは、法人化後に各機関における教育・人材養成という機能を確保しつつ、全国的な地震予知観測研究計画の中での人材育成機関として位置付ける必要がある。

(略)