『長崎新聞』2007年1月29日付

九州の国立大連携へ 防災など4プロジェクト


長崎大(長崎市)、九州大(福岡市)など九州・沖縄の国立大学全十一校が新年度から大学の知的、人的資源を生かした連携事業を本格的に始動させる。災害時に大学が協力して減災、復旧に当たる「防災・環境ネットワーク」の構築、研究論文をインターネット上で紹介する共同学術雑誌の発行など四つのプロジェクトに取り組む。

九州地方知事会や財界を中心に「道州制」論議が活発化していることから、十一大学が県境の枠を越え「九州の大学」として地域貢献を果たすのが目的。「大学全入時代」をにらんで大学の付加価値を高め、学生誘致につなげる狙いもある。十一大学が加盟する国立大学協会九州支部の企画委員会で詳細を詰めており、新年度から具体化させる。

防災・環境ネットワークは土木や気象、医学、教育、法律などの研究者を事前に登録し、台風、地震、火山噴火といった災害時に現地に派遣して原因調査や減災対策、復旧、災害後のまちづくりまで細かく支援。九州地域の環境問題にも対処する。

災害で被害が出た大学の学生を他大学で受け入れて教育することも検討。共通の防災教科書を作り学生ボランティアを育成する案も出ている。

共同学術雑誌は教育・文系を対象に、「機関リポジトリ」と呼ばれるネット上の保存書庫を利用して年二回発行。各大学から寄せられた論文や調査報告書を、十一大学の教員らでつくる編集委員会で審査、厳選することで「権威ある学術誌」を作り、ネットを通じて広く情報発信する。大学院生も対象にするのが特徴という。

ほかに連携事業では毎年、各大学持ち回りでシンポジウムを企画。新年度は八月に本県で防災や産学官連携をテーマにした講座を開く予定。十一大学が昨年六、七月に東京など四カ所で開いた合同進学説明会を新年度以降も継続、都市部の学生の勧誘に力を入れる。

同支部企画委員長を務める齋藤寛長崎大学長は「大学間で組織的に連携する態勢を築き、地域に貢献する取り組みを考えていきたい」としている。