『しんぶん赤旗』2007年1月26日付

長時間労働残業代ゼロ
厚労省が法案要綱
労政審分科会 労働者委員 削除を要求


厚生労働省は二十五日の労働政策審議会労働条件分科会に、サラリーマンの長時間労働を野放しにし、残業代を払わない「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」を盛り込んだ労働基準法改悪案と、労働契約法の法案要綱を諮問しました。

労働者委員が「(WEには)国民が反対している。削除すべきだ」と求めたのにたいし、使用者委員からも「議論が尽くされておらず答申すべきでない」(日本商工会議所)との意見が出され、世論に逆らう同省の姿が浮き彫りになりました。

青木豊労働基準局長は「(首相は)法案を提出しないとはいっていない。国民への説明が不十分だった」と弁明。日本経団連の紀陸孝専務理事も「誤解されているだけ」と援護しましたが、労働者委員は「説明不足ではなく、制度が誤っているのだ。だから国民は長時間労働を助長すると批判している」(小山正樹JAM副書記長)と厳しく指摘しました。

提示された法案要綱では、WEを「自己管理型労働制」と呼び換え。対象となるサラリーマンの年収について、すでに労働時間規制から外れている管理監督者の平均水準を「勘案する」としただけで、広範な労働者を保護から外してしまう問題点は変わっていません。

何時間働いても一定時間しか労働時間と認めない「裁量労働制」についても、対象者を拡大する措置を盛り込みました。

雇用契約のルールを定める労働契約法では、労働条件の変更について「合理的であれば就業規則で変更できる」と規定。「労使対等」ルールに反して、使用者が賃下げなどを一方的に強行できる条項を掲げました。

長時間労働削減のため労働者が求めていた「残業代割増率」の引き上げは、現行上限の四十五時間を超えて初めて、現在25%の割増率を上回るよう努力義務を課すにとどまりました。

厚労省は法案提出へ道筋をつくるため、二月二日の審議会で答申を出すことをねらっています。