『読売新聞』2007年1月26日付

会社設立大学 解禁見送り、政府 特区で問題多発


構造改革特区だけに認められている株式会社による学校設立について、政府は25日、全国解禁を当面の間見送る方針を固めた。株式会社が初めて設立した「LEC東京リーガルマインド大学」(本部・東京都千代田区)の法令違反が明らかになるなど、株式会社立の学校の多くで経営面や教育研究面に問題が見つかったためだ。

文部科学省は同日午後、LEC大に対し、学校教育法に基づく初の改善勧告を発動。改善した内容について、30日以内に書面で報告するよう求めた。

私立学校の設立・経営は、学校教育法で学校法人にしか認められていないが、2003年度から、特区制度を利用すれば株式会社も学校を設立できるようになった。現在、株式会社立の学校は、大学6校、高校13校、中学1校の計20校ある。

特区制度は、弊害がなければ、一定期間後に、全国で規制を完全になくすことが前提となっており、株式会社の学校設立についても、政府の構造改革特区推進本部が2006年度中に、全国解禁を認めることを視野に検討を進めていた。

ところが、文科省による株式会社立学校の調査で、〈1〉収支が赤字〈2〉大幅な定員割れ〈3〉他の仕事と兼務する教員の指導力不足〈4〉図書館の蔵書が少ない――などの問題が浮上。さらにLEC大が改善勧告を受けることになったことから、同本部は、全国解禁を見送らざるを得ないと判断した。

一方、文科省はLEC大への改善勧告の中で、専任教員の実態と教育方法の2点が、大学設置基準などに明確に違反すると認定した。専任教員173人中106人が授業を全く行っていなかったほか、ビデオ授業のほとんどで教員が立ち会わず、質疑応答が可能なのはビデオ授業全体の約1%しかなかった。

また、授業を行っている専任教員67人のうち40人は、経営母体の株式会社が全国展開する資格試験対策予備校で勤務していた。文科省は、大学と予備校が一体化している点についても改善に努めるよう求めた。

今後、LEC大が勧告内容を改善できなければ、学校教育法に基づく変更命令、廃止命令に進むことになる。同大は、特区の株式会社立学校が解禁された初年度の特例により、わずか3か月の審査で設置認可され、04年4月に開校した。

構造改革特区 地域限定で特定分野の規制を緩和する制度。自治体が計画を申請し、政府が認定する。これまでに株式会社の農業参入など計121件が、地域限定の規制が外され、全国解禁された。