『しんぶん赤旗』2007年1月25日付

ホワイトカラー・エグゼンプション
今国会に厚労省固執
法案要綱作成


厚生労働省が今国会に法案提出をねらう労働基準法改悪案などの法案要綱の概要が二十四日までに明らかになりました。

サラリーマンを何時間でも働かせて残業代も払わない「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)制度」を「自己管理型労働制」の名称で導入する内容を掲げており、あくまで今国会提出をねらう姿勢を示しています。(5面に関連記事)

同省は、二十五日に開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)労働条件分科会に、この法案要綱を提出する方針です。

WEについては、労働者・国民の世論と運動によって、安倍晋三首相が「現段階で国民の理解が得られていない」として今国会への法案提出見送りを表明(十六日)。

しかし、厚労省は「方針は全く変わっていない」(柳沢伯夫厚労相、十九日)として法案提出準備をすすめており、日本経団連の御手洗冨士夫会長も二十二日、「提出しないとは考えていない」と今国会提出を強く求めています。

法案要綱では、対象となるサラリーマンの年収について、すでに労働時間規制から外れている管理監督者の平均水準を勘案するとしているだけで対象者が恣意(しい)的に拡大されかねない内容となっています。

法案要綱ではまた、新しく制定する「労働契約法」で、労働者が反対しても使用者が定める「就業規則」で労働条件を一方的に改悪できる規定も盛り込んでいます。

全労連は「労働法制改悪のもくろみを完全に断念させよう」と呼びかけており、二十五日には厚労省を包囲する行動をおこないます。

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ホワイトカラー・エグゼンプション
名前を変えて法制化せよ
「土日出社したい人たくさんいる」
経財会議で民間議員


ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)の今国会への法案提出を政府が見送ったことに対し、十八日の経済財政諮問会議で八代尚宏国際基督教大学教授ら民間議員が政府の対応を批判し、名前を変えてあくまで法制化すべきだと主張しました。

二十三日に公表された議事要旨で分かりました。

八代氏は「反対派が『残業代ゼロ法案』とワンフレーズで表現した。これに対してちゃんとした対応がとられていない」と不満を述べました。

同氏は「いわば管理職手当のように一定額を最初から出すことによって、それ以上残業が長くても短くても変わらないというのが本来の趣旨」だから「残業の定額払い法案」と呼ぶべきだと主張。「ぜひ、諮問会議の下の労働市場改革専門調査会でも訴えていきたい」と推進する構えを示しました。

民間議員の丹羽宇一郎伊藤忠商事会長も「土日でも残業代は要らないから出社したいという人がたくさんいる」として、「残業代は要らないから仕事をさせてくださいという人に、仕事をするなという経済の仕組みは実におかしい」と発言しました。

同氏は「自由労働時間制」と命名し、過労死防止のため内部告発制度や罰則を設けて導入すればいいと提案しました。

八代氏の発言のように残業代を「一定額」にするのであれば、長時間残業が不払いになるのは明らかです。出退勤の時間管理もしなくなるホワイトカラー・エグゼンプションで、過労死の使用者責任を労働者がどうやって立証せよというのでしょうか。