《国民投票法案に関する情報》
2007年1月23日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

国民投票法案をめぐる情勢は、民主党が「22日、憲法改正の手続きを定める国民投票法案について、25日召集の通常国会で与党が民主党の主張を取り入れた修正をした場合は賛成する方向で党内調整に入った。」(1月23日3時9分配信 毎日新聞: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070123-00000016-mai-pol )という下で、極めて重大な局面に入りつつあります。この中で、自由法曹団が、修正によっても国民投票法案の危険な本質は変わらないとして、廃案を求める声明( http://www.jlaf.jp/jlaf_file/070122touhyou.pdf )を発表しましたので、ご紹介します。また、同団ホームページのトップページに「国民投票法案」のコーナー(http://www.jlaf.jp/menu/kokumin_touhyou.html )が設置されました。廃案のための運動に活用させていただきましょう。

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国民投票法案の修正合意を許さず断固廃案を求める声明


1 自民・公明の与党と民主党は、それぞれ改憲手続法案である国民投票法案の修正案を昨年の臨時国会において公表した。新聞報道によれば、水面下において修正合意に向けた話し合いを進めているといわれている。修正案は、無料の意見広告について賛成と反対の政党を平等に取り扱うとする点、公務員・教育者の国民投票運動の規制に罰則を設けなかった点など若干の改善はあるものの、同法案の危険な本質は何ら変わっていない。

2 第1に、修正案では、マスコミによる有料広告が野放しにされたままである。これでは、テレビ、ラジオを通じて数百億円に及ぶ巨費を投じた「改憲」キャンペーンにより国民はマインドコントロールされるおそれが大きく、賛否両論に関する十分な情報と熟慮に基づく、国民の意思決定は不可能である。CM広告が世論に与える影響力の大きさに鑑みるならば、これを放置することは断じて許されない。

3  第2に、国民投票運動についても、現行の国家公務員法、人事院規則、教育公務員特例法における政治活動の禁止規定を適用しないとしているものの、約500万人にのぼる公務員・教育者の「地位利用」についてはこれを禁止するとしている。結局、国民投票運動をした公務員や教育者が行政処分の対象となり得るのであって、国民投票運動に対する重大な規制になることは明らかである。

4  第3に、修正案は、国民の過半数の賛成という要件についても、白票や棄権票をカウントしないとしており、修正案の「投票総数」は有効投票数の言葉の言い換えに過ぎない。このような修正は明らかに詭弁である。さらに、修正案においても最低投票率の制限は設けられていない。これでは、国民のごく一部の賛成で改憲に至るという極めて不合理な結果を招くおそれがあると言わざるを得ない。

5  さらに、修正案は、未だに一括投票の余地を残している。修正案は、憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとすると定めており、発議の仕方次第で実質的に一括投票を行うことが可能である。このような投票方式では、国民の意思を著しく歪める結果となると言わざるを得ない。

6  修正案は、何が何でも改憲を実現するための不公正な手続法である。修正案においても法案の根本的な問題点が何ら解決されていないのは、この法案を国民の意思に反して日本を「戦争する国」とするための改憲を実現する手段としようとしているからに他ならない。このように憲法改悪に道を開くための不公正で汚れた国民投票法案の成立は断じて許されない。

7  国民投票法案の修正案は、その目的においても、内容においても憲法に反する悪法である。国会の特別委員会の一部の政治家による談合によりこのような悪法の成立をはかろうとする動きは、国民を裏切るものと言わざるを得ない。自由法曹団は、このような国民投票法案に断固反対し、同法案の廃案を目指して全力を尽くすことを決意する。自由法曹団は、このような悪法に対してすべての国民が反対の声を上げることを呼びかけるものである。

2007年1月20日 自由法曹団団長 松井繁明