『河北新報』2007年1月15日付

「東北大」に特化し投資 新ファンド今春設立


東北大の先端的な技術シーズ(種)を活用したベンチャー企業などに投資対象を「特化」し、資金を運用する地域ファンドが今春にも、仙台市に設立される見通しとなった。東北大発の高度な専門技術や知的財産などの事業化を、直接金融の新基金がより迅速に後押しする枠組みをつくる。ファンドの運営主体となる東北イノベーションキャピタル(TICC、仙台市)が15日、構想を明らかにした。

新ファンドの名称は、「TICC大学連携投資事業有限責任組合」(仮称)。TICCが現在、政府系の中小企業・ベンチャー支援機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(東京)などに協力を呼び掛け、設立準備を進めている。

構想によると、基金は二十数億円を目標規模とする。TICCが運営している先発のベンチャーファンド「東北インキュベーションファンド」「東北グロースファンド」の出資者のほか、東京の機関投資家などにも出資を募り、2007年度早期の発足を目指す。

新ファンドは、東北大の技術シーズを活用したベンチャー企業、東北大の教授ら関係者が創業したり役員に名を連ねるなどの未上場企業を、主な投資対象とするのが既存の両ファンドと異なる特徴という。

大学の技術シーズを投資対象としたベンチャーファンドとしては、「UTEC1号」(東大)「北大アンビシャスファンド」(北海道大)「阪大イノベーションファンド」(大阪大)などの先行例がある。

設置目的について、TICCの熊谷巧社長は「東北大の世界トップレベルの研究成果をスピーディーに事業化することが、東北の産業振興に不可欠。そのためには、より専門的なリスクマネーの供給機能が必要と判断した」と説明している。

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東北大とTICCは15日までに、新ファンドの創設も念頭に相互の業務協力に関する協定を締結した。

主な協定内容は、(1)東北大の研究成果の事業化、起業化に関する協力(2)TICCが運営するファンドの投資先・投資候補に対する東北大の学術指導、共同研究の実施(3)ファンドの投資先・投資候補に対する東北大の情報提供と技術評価の実施―などとなっている。