『朝日新聞』2007年1月11日付

残業代ゼロ法案、提出へ 厚労相「対象は20万人」


政府は10日、一定の条件を満たした会社員を労働時間規制から外し、残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入する法案を通常国会に提出する方針を固めた。ただ、参院選を控え与党内の反発は強く、法案提出が今春の予算成立後にずれ込む可能性もある。これに関連して柳沢厚生労働相は同日、自民党の中川昭一政調会長ら与党幹部と会談し、年収900万円以上の会社員に限定することで対象者は20万人にとどまるとの推計を示した。

塩崎官房長官は10日の記者会見で「国民の理解を深め、提出するのが必要なことだと思う」と述べた。その後の講演でも「法律を提出するのが筋だと官房長官として考えている」と強調した。

政府は05年3月に閣議決定した規制改革・民間開放推進3カ年計画で「米国を参考にした労働時間規制の適用除外を検討」と打ち出し、厚労省が検討を進めてきた。さらに、財界が反対する最低賃金の引き上げや、パートの正社員化を促すパート労働法改正の議論とセットで調整してきた経緯もある。与党の反発が強い中で政府が提出方針を固めたのは、こうした背景がある。

ホワイトカラー・エグゼンプションの導入をめぐり、厚労省は年収条件について労使の合意が得られなかったため、法案成立後に政省令で定めるとしていた。しかし、参院選を前に与党幹部から先送り論が強まり、年収条件を前倒しで提示せざるを得なくなった形だ。

同省の賃金構造基本統計(05年)などに基づく推計では、年収900万円以上の会社員は約540万人。このうち部課長など管理監督者としてもともと労働時間規制の対象外が約300万人を占める。さらに業務内容を上司から指示され自分で決められないと見られる人も除くと40万人が残る。ホワイトカラーが半数とみて、対象者を全労働者5400万人の0.4%の20万人とはじいた。制度ができても「実際に企業が導入し、適用されるのは2万人程度」と同省は見ている。