『北海道新聞』2007年1月10日付

新労働時間制 反発強く厚労省悩む 与党「参院選に悪影響」


ホワイトカラー労働者の労働時間規制を一部撤廃するホワイトカラー・エグゼンプションの導入をめぐり、厚生労働省が頭を悩ませている。通常国会での労働基準法の改正を目指す同省だが、参院選への悪影響を懸念する政府・与党内で慎重論が高まっているためだ。ただ、法改正を断念すれば「他の労働関連法案に影響しかねない」との懸念もあり、対応に苦慮している。

「懸念を払拭(ふっしょく)するような法律案を作って、理解を得るよう努めたい」。柳沢伯夫厚労相は九日午前の記者会見で、通常国会で労基法改正を目指す方針に変わりがないことを強調した。

同制度は、一定要件を満たすホワイトカラー労働者を対象に、一日八時間の労働時間規制を撤廃する。経済界が強く求めているが、労働者の裁量が広がる代わりに残業代がなくなるため、労働界は「長時間労働を助長する」と猛反発。しかし同省は、昨年十二月二十七日の労働政策審議会で制度導入を求める最終報告をまとめ、法案提出準備を進めている。

ところが、ここにきて、参院選への影響を懸念する政府・与党内から慎重論が噴出。九日には自民党の片山虎之助参院幹事長が会見で「ちょっと急ぎすぎじゃないか。本格導入はもう少し慎重にした方がいい」と指摘した。

厚労省が頭を悩ませるのは、通常国会では他の労働関連法の改正も予定しているためだ。同省は労働時間の規制緩和の一方、パート労働者の待遇改善や最低賃金の引き上げなど経済界が反発する法改正にも理解を求めてきた。「いくつもの法案を絡めて水面下で労使間の利害調整をしてきた。一つ崩れると収まりがつかなくなりかねない」と、ある自民党厚労族議員は指摘する。

柳沢氏は九日午後、中川秀直幹事長と会談。法案提出に理解を求めたが、中川氏は「国民の理解を得られるよう努力してほしい」と注文をつけた。与党内には、新制度が適用される労働者の年収要件を高く設定し対象者を絞り込むことなどで、「徐々に理解は広がる」と導入を容認する声もある。ただ、ハードルを高くすれば経済界から反発が出る可能性もあり、調整は難航が必至だ。