『京都新聞』2007年1月10日付

予算獲得難航 大幅遅れ 京大桂キャンパス整備


京都大桂キャンパス(京都市西京区)の整備が、予算獲得が難航して大幅に遅れている。棚上げとなっている物理系総合研究棟の建設は来年度予算でも難しい状況で、京大幹部からは「国が科学技術の社会還元に力を入れるというのなら、拠点となる大学の施設整備をきちんと進めるべきだ」との声も上がっている。

■民間資金は順調だが… 国の対応 不満も

桂キャンパスは、1999年に計画決定された。同年の補正予算で施設整備費が認められ、2001年から建設が始まった。工学と科学が融合する「テクノサイエンスヒル」と位置づけ、工学研究科と情報学研究科を本部から移転させ、AからDまで4地区約37万2000平方メートルに研究棟や事務管理棟、図書館、セミナーハウスなどを建設する計画。これまでに工学研究科のうち物理系以外が移転した。

しかし、国立大学の施設整備費の大幅な圧縮に加え、老朽施設の改修が急務となったため、新しい施設の予算獲得が難しくなった。当初は08年度末に全体が完成する計画だったが、すでに不可能になった。物理系総合研究棟は03年度予算から要求しているが、5年続けて見送られることが確実。造成が行われていないD地区の情報学研究科研究棟や、篤志家からの寄付が白紙となった図書館の建設もめどが立っていない。

一方で、京大ローム記念館(05年開設)、船井交流センター(今年7月完成予定)など、民間資金による産学連携施設は順調に建設。キャンパスに隣接する「桂イノベーションパーク」への企業立地や産学連携支援施設「研究成果活用プラザ」などの活動も順調で、京大の工学系全面移転への期待は大きい。
 京大は「産学連携の効果や桂移転で進む吉田キャンパス再整備など桂キャンパスの意義を国に訴えたい」(斎藤福栄施設・環境部長)として、打開策を模索している。