『朝日新聞』2007年1月9日付

沖縄科技大学院大、研究者集め難航 シンガポールに学ぶ


政府による沖縄振興策の目玉の一つ、沖縄科学技術大学院大学の開学準備が難航している。世界最高水準の研究拠点として国内外からノーベル賞級の研究者50人を集める構想だが、肝心の研究者集めの見通しが立たない。そこで9日から、高市・科学技術担当相が生命科学の研究振興で実績があるシンガポールを訪問し、研究者集めのノウハウを教えてもらうなど協力を要請する。

同大は、03年に開学準備が始まった。学長と研究者の半分は外国人とし、講義はすべて英語で行う。産学連携を通じた地元産業の活性化への期待から、県側も施設整備費などを分担する計画だ。だが、参加のめどが立った研究者は外国人2人を含む13人にとどまっている。

シンガポールは生命科学の新旧6研究施設を中心とする研究都市バイオポリスを3年前に建設。多額の研究予算を用意して海外からチームごと引き抜くなどの手法で研究者を集め、急速に力をつけた。

研究成果をねらって日米欧の製薬会社などの研究所が進出する相乗効果も出始めた。こうしたイメージが同大構想と重なることから、高市担当相がシンガポール科学技術研究庁のタン副長官と会談し、人材確保のノウハウを中心にアドバイスを求めることになった。

ただ、沖縄はシンガポールと事情がまったく異なる。キャンパスをつくる沖縄県恩納村の現場は周辺に他の研究施設などがなく、生活環境も一から整備するため、研究者にとって不安が大きい。海外での研究者集めは開学準備組織の理事長でノーベル賞受賞者のシドニー・ブレナー氏の人脈が頼りだ。

研究者が集まらないため、当初は07年度の予定だった開学がずれこんだ。ブレナー理事長の諮問機関である運営委員会では、早期開学を求める一部委員と拙速を嫌う理事長側との間で対立が続いたこともあり、運営委による組織だった勧誘活動はできていない。

教授陣が決まらないので授業のカリキュラムも決まらず、大学院生募集のめども立っていない。内閣府新大学院大学企画推進室は、研究棟が一部完成する09年度に研究者20人の態勢でとりあえずの開学をめざすとしているが、流動的だ。