日刊工業新聞2007年1月10日付

NITEと九大、安全な製品普及へ人間特性研究で提携


経済産業省所管の独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)は九州大学と人体の寸法や形状、筋力、感覚など人間特性に基づくデータの研究開発や標準化で提携する。人間特性データを活用したモノづくりを実現し、より安心・安全な製品の普及に役立てるのが目的。NITEは人間特性データの主要な研究開発機関の一つであり、九大は人間特性データの研究活動で有力な大学。両者は2月下旬に覚書を交わし、協力関係を結ぶことで合意する予定だ。

提携内容は人間特性データについての研究開発や標準化の推進、計測手法の開発や普及、データの共有など。また、NITEから九大への専門家派遣や、NITEでの九大のインターン受け入れなど、人間特性データの研究開発に携わる人材育成でも協力していく。

NITEは人間特性データの研究開発などを推進。20―80歳の男女1000人の関節の稼働域や操作力などの身体特性データを有し、計測手法の開発やデータベース(DB)の構築に取り組んでいる。今後も計測手法開発やDBの内容拡充を進めるほか、大学や研究機関と連携しながら、人間特性データをモノづくりに活用できる基盤整備を進める考え。

九大は「技術の人間化」を目指した研究活動を行っており、文部科学省の「21世紀COEプログラム」で唯一の人間特性データの研究拠点に指定されている。

少子高齢化や製品の安心・安全が社会的問題になるなか、人間特性に合ったモノづくりの重要性が高まっている。例えば、消火器の場合、握力が低下した高齢者にとって、消火器のグリップを握って開栓するのは困難。また、家電製品の報知音も高齢者に合わせた音質、音量が求められる。

企業も安心・安全の向上や使いやすさなどから、人間特性データに基づく製品開発に着目。日本人のサイズに加えて、動特性、感覚・知覚データが不可欠となっている。