『中日新聞』2007年1月10日付

三重大が新「勢水丸」建造へ
学生獲得競争の目玉に


老朽化していた三重大生物資源学部の練習船「勢水丸」の新船が建造されることになった。新年度の政府概算要求で認められた。一時は、国の予算削減の中で必要性に異論も出たが、念願がかなった。中部地方の国立大で練習船を持つのは同大だけ。「学生獲得競争が始まる中、三重大のアピールポイントにできる」と関係者は喜んでいる。 

現在の勢水丸は、一九八〇(昭和五十五)年に建造された。学生の海洋実習と基礎的な調査・研究を担うほか、名古屋大の実習も引き受けている。だが、耐用年数の二十年を超え、航行中に船底に穴が開いたり、トイレの水が流れなかったりと老朽化。四年前から建造を訴え続けてきた。

同大を含め全国では国立大七大学が十三隻の練習船を持っている。同学部の練習船建造委員長を務める前川行幸教授(藻類学)によると、財務省から本年度、一層の共同運航策や教育成果を示さなければ新たな建造を認めないと通達された。

このため七大学は「練習船ワーキンググループ」を設置し、昨年十一月末に共同利用計画などを盛り込んだ中間答申案を提出し、建造が認められた。新船は全長四十七メートル、三一八トン、定員四十四人。二〇〇七、〇八年の二カ年で建造し、総工費(見積もり)は約二十億円。

同大は勢水丸について新年度から放送大や東京海洋大との共同利用を模索する。前川教授は「楽観視できない状況で、うれしいというよりほっとしている」と話している。

現行船の運航開始から乗船する内田誠船長は「学生が現場を知っていることは大切。安全に最先端の研究機器を使って勉強させたい」と話している。

(奥田哲平)