『静岡新聞』2007年1月5日付

浜松医大など「連合大学院」 4校が設置構想


浜松医科大(浜松市半田山、寺尾俊彦学長)は4日までに、大阪大、金沢大、中京大の4校で連携して連合大学院「子どものこころの発達研究科」を設置する構想を固めた。医学博士を養成するが、医学以外にも心理学や教育学など多分野の修士を受け入れる前例のない形態を取る。来年度の大学設置審議会に申請して認められれば、平成20年度に国内初の“異分野融合型”の連合大学院が誕生する。

連合大学院は複数の大学が協力して得意分野の講座を提供し合う教育研究機関。浜医大などの連合大学院は、浜医大と阪大などが本年度から始めた連携事業「子どものこころの発達研究センター」(センター長・遠山正彌大阪大医学部長)を母体に開設する。

MRI(磁気共鳴画像装置)やPET(陽電子断層撮影)などの脳画像手法を用いた解析や疫学調査に強い浜医大は画像生物学や疫学統計学、分子生物レベルの研究に強い阪大は分子生物遺伝学や小児発達神経学、金沢大は認知機能学や高次脳機能学、中京大は特別支援教育と各講座を担当。同センター副センター長の森則夫浜医大教授は「この分野の研究は進歩が早く一大学では成り立たないが、従来の連合大学院にないやり方で、各大学の異なる強みを生かした総合的な研究ができる」と異分野融合型の利点を強調する。

入学対象は、医学部や薬学部の6年制学部の卒業者のほかに、心理や社会、教育、福祉などの人文社会学分野の修士。社会人入学も認められる。連合大学院を4年間(社会人は5年間)で修業すると、例えば、臨床心理士が医学博士を取得することもできる。

さらに、金沢大で運用が進んでいる遠隔講義システムを導入し、地理的に離れた各専攻が基礎教育を共有。基本的に1カ所にいながら修業できる。定員は連合大学院全体で30人を見込み、教員数などは今後、大学間で調整する方針。

基幹校も務める阪大の遠山センター長は、「この連合大学院はスクールカウンセラーの指導者養成にもつながり、発達研究センターも各大学が連携して研究成果が上がっている。将来的には独立した大学院大学を目指したい」と意欲を示す。

連合大学院

大学間で得意分野の講座を提供し合い、教育や研究の質を高めようと、平成16年度から制度上で認められた大学院の形態。複数の大学が協力して1つの組織として教育研究にあたる。文部科学省によると、平成18年度は全国に国立大11、私立3の組織があるが、農学系や教育系などの同1分野同士の連合大学院が中心。文系、理系の多分野にわたる分野横断的な組織はこれまでなかった。大学院大学とは学部から完全に独立した大学院。