『産経新聞』2007年1月6日付

ベテラン教師に学ぶ 教職大学院設置基準


現職教師を高い資質を備えた“プロ教師”に再教育したり、即戦力を備えた新人教師を養成する専門職大学院「教職大学院」について、文部科学省が設置基準を策定、教授陣の主力を教壇での豊富な経験を持つベテラン教師とし、修了には小学校での長期実習を義務づけることにした。教職大学院は文科省が進める教師の資質向上策の柱で、平成20年度の開校を目指しており、教師の実践的な「教える技量」を強化する方針だ。

文科省によると、教職大学院の修業年限は原則2年間で修了には45単位(1単位は45時間)修得することが必要。このうち、10単位以上を小学校に実際に出向いての実習にすることが不可欠としており、大学院側はこのために「連携協力校」となる小学校を確保しなければならない。また、教壇で教員実務を20年以上経験し、「教え方」や「教える技」に精通した「実務家教員」を教授陣の4割以上確保することが必要となっている。

児童生徒の学力が国際的にも高いことで知られるフィンランドでは、教員を大学院修了者に限るなど、教師の質を一定に保つ工夫がされている。これに比べて日本の教員養成の中心的な役割を担っている大学の教育学部には、「実践的な『教え方』などを身につける訓練が軽視されている」といった批判がある。教員の資質に厳しい視線が注がれるなか、同省では質の高い教員養成に向けて見直しを進めていた。

開校に向けた大学側や自治体の準備も加速しており、すでに兵庫教育大大学院(兵庫県)が専攻コースなどを公表。京都でも6大学が国立と私立の枠を超え、「連合教職大学院」を開学する準備を進めている。東京都では都教委が東京学芸大や玉川大など大学院設置を考える大学との連携を模索。都内の公立学校で実習を受け入れる代わりに、優秀な新人教員を確保したり、現職教員の指導力向上を狙う考えだ。

同省では今月中に、省令や告示などの改正を図ったうえで、6月から開設審査をはじめ、20年春の開校を目指している。