『西日本新聞』2007年1月4日付

水素の権威九大に集結 国内外から80人超 貯蔵法など共同研究 08年までに


九州大伊都キャンパス(福岡市西区など)に今秋完成予定の「水素材料先端科学研究センター」(センター長・村上敬(ゆき)宜(たか)九州大副学長)に2008年までに、国内をはじめ米国やイタリア、ウクライナなど水素エネルギーに関する世界トップレベルの専門家約30人が新たに集まり、共同研究に取り組むことが3日分かった。名実ともに最先端頭脳を備えた水素研究の世界的拠点が、福岡県に誕生する。

水素エネルギーは次世代のクリーンエネルギーとして注目されている。国の「水素利用技術研究開発特区」に指定されている伊都キャンパスは、水素エネルギー普及の課題とされる安全性の確立に大きな役割を担う。

同センターは独立行政法人「産業技術総合研究所」(産総研・東京)が建設している。現在、九大を中心に約50人の専門家が、水素の貯蔵や輸送などの基礎研究をしている。08年にセンターが本格稼働すると、共同研究に取り組む専門家は国内外合わせて80人を超す見込み。

参加が決まった海外の主な専門家は、水素の侵入で金属が劣化する水素脆(ぜい)化(か)研究に取り組み、米国立科学財団賞などを受賞した米イリノイ大のソフロニス教授、材料科学研究の第一人者で米国金属学会賞などを受賞した米バージニア大のガングロフ教授など。滞在期間は数カ月から1年程度で、福岡と在籍する大学を行き来しながら研究に携わる。

国は12年度までに、同センターに100億円超の予算を投入する方針。水素脆化や水素が与える材料の摩擦や摩耗などの仕組みを解明し、水素が安全に貯蔵、輸送できる基盤整備を目指す。

九大と産総研などは今年2月、同センター設立を記念して、国内外の研究者による水素先端世界フォーラムを福岡市などで開催する。世界の水素研究拠点に成長した福岡から、これからの水素戦略や研究開発を世界にアピールする。


■水素エネルギー

二酸化炭素(CO2)の排出量が極めて少ない次世代のクリーンエネルギー。水を電気分解すると酸素と水素が発生するが、この逆の反応を利用して酸素と水素から電気を取り出す。

燃料電池などの研究開発が進んでいるが、水素の貯蔵や輸送で使う容器などへの影響が十分に解明されておらず、危険性を指摘する声もある。安全性の確立が最大の課題。