『四国新聞』2007年1月1日付

「瀬戸内研究」の拠点へ−香川大が全学連携構想


香川大(一井真比古学長)で今春から、「瀬戸内研究ネットワーク構想」が始動する。赤潮やため池、遠隔診断医療など、長年取り組んできた大学の特徴的な研究を「瀬戸内圏の課題」としてくくり、重点研究テーマを新たに設定。全六学部から集まった研究者が行政や企業と連携して研究を推進する。瀬戸内圏の現状や保全、そこで暮らす人々の生活、育まれた文化などに新たな研究の光を当て、瀬戸内研究の拠点づくりを目指す。

四国新聞社の取材に一井学長が答えた。一井学長は「瀬戸内圏の課題解決は香川大の使命。これまでの研究シーズの充実と新たな課題の発掘、解決策の提案に努め、豊かな地域社会の形成に貢献する『知の総合拠点』としてアピールしたい」と話している。

瀬戸内研究構想は、香川大と県幹部が定期的に意見交換する連絡協議会で浮上。道州制を見据えて拠点性の強化を目指す県と、「看板研究」による地域貢献を掲げる大学側が、連携事業の目玉として検討を進めてきた。

構想は、干潟環境の保全、赤潮、ため池、防災、讃岐の偉人(平賀源内、久米通賢)、地域資源と観光、遠隔診断など、既に企業や行政との連携で研究が進行中の特徴的なテーマを瀬戸内研究の候補としてリストアップ。これらを、「瀬戸内海の環境保全・改善」「高齢者の社会的支援」「瀬戸内の地域活性化」の三テーマにグループ化する。

大学では、まず一定の成果が出ている研究を重点支援するほか、近接する分野の研究者の「マッチング」に取り組む。最終的には三グループごとに数個ずつの重点テーマを絞り込み、本格的な研究に乗り出す。

二〇〇七年度は準備期間とし、〇八年度から「瀬戸内研究」として特別に予算枠を作る方針。将来的には、研究情報のデータベース化と発信の拠点となる「瀬戸内研究センター」の創設を目指す。

今後は問題点の整理や地域から広く意見を聞く場として、グループごとにシンポジウムを開催。第一弾として、三月五日に地域活性化をテーマにしたシンポジウム「瀬戸内の歴史・文化とエコツーリズム」を香川県高松市のサンポートホール高松で開く予定。

プロジェクトを統括する前田肇副学長(学術担当理事)は「瀬戸内研究では期限を設けず、常に地域の課題を意識し、香川大を代表する持続的な取り組みとして推進したい」と話している。