『毎日新聞』2006年12月29日付

教育改革:国の改革に異議あり 地方から異例のアピール−−教職員、人事権移譲めぐり


◇教育長側「現行の制度で」/市長側「中核市に移して」

国の教育改革に異議あり!−−。教育再生会議が発足し、改正教育基本法も成立。安倍晋三首相が最重要課題に掲げる教育改革は今後、教員免許更新制度導入など具体的な制度改正に舞台が移る。その中でも自治体教委が注目しているのが、教職員人事権の移譲問題と教育委員会のあり方だ。これらの問題を巡り、教育長、市長から異例の意見表明が相次いでいる。

教職員人事権移譲については、中央教育審議会が昨年10月、都道府県と政令指定都市が持つ人事権を「中核市をはじめとする一定の自治体」に移譲することを検討するよう求める答申を出した。地域に根ざした教員の養成などの効果を狙っての答申だった。

こうした動きに、31府県の教育長は今月18日、連名で「重大な懸念」を表明し、伊吹文明文部科学相と教育再生会議にアピール文を持ち込んだ。中核市に人事権を移譲された場合、「人材の偏在化を招き、教育水準に格差をもたらす」と現行制度の維持を求めた。

会見した和歌山県の小関洋治教育長ら3人は、「はっきりと言わせていただく時期にきている。現状を憂える者が有志という形をとった」と強い姿勢で、国に慎重な対応を求めた。

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高校の単位不足やいじめ問題で役割が注目された教育委員会制度。全国市長会の「教育における地方分権の推進に関する研究会」も19日、教育行政に関する市長の役割と責任の強化を求める緊急アピールを文科省と教育再生会議に提出し、教育委員会設置の選択制導入を求めた。

アピールは「教育委員会と市長部局の責任体制が不明確で、十分な権限を持たない市長が最終的な責任を問われるケースが多い」と指摘する。

また、教職員の人事権については「中核市まで下ろすべきだ」と主張。都道府県教委側と対立するが、市長会側は「相互交流をしていけば都道府県教委とも意見の一致を見ることが可能」としている。

背景には、安倍政権になり、早急に具体化する改革論議に地方側が危機感を募らせていることもあるとみられている。【高山純二、佐藤敬一】