『朝日新聞』2006年12月21日付

「サステイナビリティー」、5大学を研究拠点に連携


主に環境問題で社会の持続可能性を示す言葉として使われる「サステイナビリ
ティー」を学問として確立し、専門家の育成も目指す大学の連携が始まっている。
昨年、大阪大や京都大など5大学を研究拠点とする「サステイナビリティ学連携
研究機構」(IR3S、機構長=小宮山宏・東京大総長)が発足。来年度からは、
大阪大や東京大の大学院がサステイナビリティー学の授業を開講、京都大に
は大学院に「サステイナビリティコース」が設けられる。

11月には大阪大で、研究拠点の一つで同大学の全学組織「サステイナビリティ
・サイエンス研究機構」(RISS)が、国際シンポジウム「アジア循環型社会の形成」
を開催。日本、中国、韓国、ベトナムの研究者が報告した。

RISS企画推進室長の盛岡通教授は「20年ほど前に国連で『サステイナブル・ディ
ベロップメント』(持続可能な開発)の概念が提唱されたが学術的な定義づけはま
だされていない」と連携研究の意義を強調した。

IR3Sのメンバーである北海道大の斎藤裕教授は、自然と調和的と一般的に思わ
れている農業との関連について、「環境に影響を及ぼす農薬や化学肥料も使われ
ている」と指摘。「害虫を駆除するのに、農薬などではなく天敵を使うなど生物多様
性を利用することで、解決ができないか」と提案した。

RISSの梅田靖教授は、日本から中古の車やパソコンなどがアジア各国に輸出され
ている実態を紹介。海外で中古品の部品が再び使われ、それらの寿命が延びる利
点がある一方で、輸出先でのこれらの廃棄物の管理が不十分であることが、水や
大気などの汚染の一因になっているともいう。

京都大も12月16日、公開シンポを開催。IR3Sでは、活動を分かりやすく紹介した
無料の季刊誌「サステナ」を全国の公立図書館に寄贈するなどしている。