『中日新聞』2006年12月19日付

学力テスト参加に反発
愛知・犬山市教育長


文部科学省の「全国学力テスト」への不参加を決めていた愛知県犬山市で、参
加を公約に掲げて17日の市長選に初当選した田中志典(ゆきのり)新市長(48)
と、同市教育委員会の対立が早くも鮮明になった。18日、瀬見井久教育長(69)
は「意見としては尊重するが、方針を決めるのは、あくまで教委の範ちゅう」と強
調。同市の教育改革の行方は、方向転換の可能性もはらみながら不透明さを増
している。

全国学力テストは、小学6年生と中学3年生を対象に、来年度から国語と算数(数
学)が全国一斉に実施される。犬山市は「市場競争原理を安易に教育に持ち込む
べきではない」との市教委の意向を受け、石田芳弘前市長(61)が今年2月、「参
加拒否」を打ち出していた。

これに対し、田中市長は選挙戦で「テストを受けたい児童・生徒、受けさせたい保
護者の権利を奪うのはどうか。参加すべきだ」と主張。

18日の初登庁の際にも「市民の声を聞きながら、教委との間で考え方をすり合わ
せる」と公約実現に意欲を見せた。

しかし瀬見井教育長は同日、教委の独立性を指摘して「学力の問題うんぬんという
が、犬山では少人数教育を実現し学力を提供する環境を整えている。教育問題は
市町村教委がやることで、任しておいてくれ、ということだ」と述べた。

市教委では来春にも、テスト不参加の経緯をまとめた書籍を出版する予定。今月下
旬から来年1月にかけ、その本を要約した10ページほどの冊子を保護者に配布して
説明するという。