『毎日新聞』2006年12月21日付

大阪大:論文ねつ造教授を懲戒解雇


大阪大大学院生命機能研究科(大阪府吹田市)の杉野明雄教授(63)が実験
データをねつ造・改ざんしたうえ米国の科学誌に論文2本を投稿した問題で、阪
大は20日、杉野教授を同日付で懲戒解雇処分にしたと発表した。この問題を巡っ
ては同研究科が今年9月、杉野教授単独による不正だとして、大学側に懲戒解
雇を求めたが、杉野教授は不服審査を申し立てていた。阪大の教育研究評議会
は「教授の責任は、大学にとどまらせることができないほど重大」として処分を決
めた。阪大で教員の懲戒解雇処分があったのは、記録が残る1970年以降初め
て。

同研究科の調査によると、不正のあった2論文は、酵母の染色体複製に関与す
るたんぱく質の機能を解析したもので、教授が責任著者を務めた。いずれも今年
7月、米国の生化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に掲
載されたが、論文共著者の同研究科助手(当時42歳)らがねつ造に気づいた。

助手らの告発で、同研究科研究公正委員会が調査し、同委は教授が単独で不正
をしたと断定。教授は、不正の一部のみを認めるにとどまった。調査のあった今年
9月には、告発した助手がアジ化ナトリウムで服毒自殺したが、2論文のねつ造問
題との関係ははっきりしていない。

会見で研究推進担当の馬越佑吉副学長は「大学を挙げて研究公正の強化に取り
組んでいるさなかに、大学の名誉と信用を甚だしくおとしめた。二つ目の論文につ
いては、自ら取り下げようとしないばかりか、反省の色も見られない」と述べた。

阪大では昨年にも、医学論文のデータねつ造が発覚。今年2月、筆頭著者の男子
学生(当時)がねつ造したとして、共著者の2教授を停職、学生を厳重注意処分に
した。阪大の宮原秀夫学長は当時、「再び起こることのないように、研究者の研究
倫理や良心の自覚に全学を挙げて取り組む」とする見解を発表していた。【根本毅】