『神戸新聞』2006年12月16日付

「愛する国」学校現場、戸惑いと期待


制定から約六十年を経て初めて見直され、十五日に成立した改正教育基本法。
「新しい時代にふさわしい改正が必要」として、現行法より多くの条文を盛り込ん
だ「教育の憲法」に、兵庫県内の学校現場では「『愛国心』を教えるのは難しい」
「家庭教育の充実につながれば」など、戸惑いと期待が交錯した。

「愛国心」は、教育の目標として「国を愛する態度を養う」という表現で条文に記さ
れた。姫路市立中学校の女性教諭(52)は「自分の国や故郷を愛する気持ちは
確認し合うもの。教えるのは難しい」と険しい表情。「あえて法律に記すことで強
調される。『君が代を必ず歌え』など、思想や主義にかかわることにまで枠をつくっ
てしまわないか」と懸念する。

政府と自治体が「教育振興基本計画」を定めることも明記された。阪神地域の県
立高校の男性校長(56)は「地域の実情に合った教育を進められるのはいいこと」
としながらも、「法律に基づく、という重みが現場の教師を束縛することにならない
か心配」と話した。

一方、神戸市立中学校の男性校長(59)は、改正法に「家庭教育」の条文が新た
に盛り込まれたことを「時代の流れを踏まえた内容」と評価した。

「共働き家庭が増え、朝食をとらなかったり、昼食の弁当を持って来ない生徒が増
えている。そのうち学校が『一泊二食付き』になる時代が来るのでは、という懸念も
ある」。条文では子どもの教育への保護者の責任などをうたっており、同校長は「教
育は学校に任せておけばいい、という保護者の意識が変わるきっかけになれば」と
期待した。(宮本万里子)