『読売新聞』2006年12月18日付

国立大授業料の「標準額」据え置き、政府が値下げ促す


政府は、国立大学の年間授業料の目安となる「標準額」について、2007年
度の値上げを見送り、国立大学法人が定めた現在の中期計画期間が終了する09
年度まで、現行の53万5800円を据え置く方針を固めた。

標準額を据え置くことで各大学の授業料値上げを抑制するとともに、大学の自
主的な努力で値下げする環境を整えるのが狙いだ。07年度予算編成で正式に
決定する。

国立大学は以前から、慣例でほぼ2年に1回、授業料を引き上げてきた。04
年度に、柔軟な運営が可能な国立大学法人に衣替えしたことにより、従来、一
律だった国立大の授業料は、国が決めた標準額の上限10%の枠内で自由に設
定できるようになった。

しかし、標準額が上がると、国が各大学に支給する補助金(運営費交付金)が
減る仕組みになっているため、多くの大学は05年度に標準額が上がった時も、
授業料を標準額と同額にした。現在、全89大学のうち、81大学は標準額と
同額で、標準額以下は6大学、特定の研究科で標準額以上は2大学にとどまっ
ている。

国立大学協会(会長・相沢益男東京工業大学長)からは、「標準額が2年に1
回上がると、各大学の裁量が事実上なくなる」などの批判が出ていた。このた
め、政府は、07年度は慣例では値上げの年にあたるが、標準額を据え置くこ
とにしたものだ。

標準額が据え置かれると、多くの大学は当面、授業料を現状維持にすると見ら
れる。09年度までの期間では、国立大学法人の柔軟な運営が可能となり、独
自の判断で値上げしたり、値下げしたりする大学が出てくることが予想される。

少子高齢化の進展で、多くの大学は学生を集めるのが以前より難しくなってい
る。このため、〈1〉有名大学は充実した研究体制を作るために値上げする
〈2〉学生を集めにくい地方大学は値下げする――などの傾向が出てくる可能
性がある。

国立大の授業料は、新制大学が発足した1949年は3600円だった。72
年に10倍の3万6000円になり、その後、物価上昇、私大との均衡などの
理由で値上げが続いている。