『朝日新聞』2006年12月15日付 声欄

やらせ行為は教育に合わぬ
無職 中田 一衛 (東京都府中市 75歳)


国民の意見を聞くはずのタウンミーティングで、「やらせ」質問が発覚したこ
とを受けて、調査をした政府の調査委員会の最終報告の概要が、13日夕
刊に載った。

発言内容を国が指定していたことが確認された15件を含め、国からの発言
依頼、一般参加者を装った関係者の参加、参加謝礼の支払い、好ましくない
人物の排除など、174回のタウンミーティングの過半数で国の工作があった
という。

やらせ質問のうち、半数近くが教育改革に関するものだった。民主主義を絵
空事にする、こうした行為が、国主導で行われたことに驚く。教育基本法の理
念に全く反する行為に、改正の提案者は恥を感じないのだろうか。

異論の多い教育基本法改正案であるが、この一件をみても、廃案とすべきで
はないか。

「やらせ」当時、官房長官であった安倍首相は、減給3カ月をもって「私の責任
の取り方だ」と語ったと報ぜられているが、民主主義を空洞化させた、行為の
重さを考えると、総理の職は辞任すべきだと思う。


教育基本法で多角的報道を
大学非常勤講師 上杉 佐代子 (静岡市駿河区 60歳)

5日の参院特別委員会で伊吹文部科学相は教育基本法「改正」案について、
自民党の新憲法草案との「整合性をチェックしている」と述べたそうですが、そ
れは憲法遵守義務違反ではないでしょうか。

教育基本法は、日本国憲法の理想を実現するためのものと位置づけられてい
ます。まだ上程されてもいない自民党の「憲法草案」を参照して教育基本法を
変えることは、事実上の憲法改定です。こんな重大なことが国民的議論無しに
通ってしまってよいのでしょうか。

先日国会前に行きましたが、歩道は教育基本法改悪に反対する数百の人々で
あふれていました。夜は数千の人々が抗議に集まったそうです。国会の公述人・
参考人たちが徹底審議を求めるアピールを出した、とも聞きます。しかしながら、
こうしたことは一般メディアでは、あまり報じられていません。教育基本法「改正」
案は、一から出直すべき重大案件です。

メディアは、法案が通過したときだけ報じるのではなく、その前に、反対運動も含
めさまざまな角度からこの問題を扱って欲しいと思います。