『しんぶん赤旗』2006年12月14日付 文科省が“やらせ”主導 フォーラムに大量動員 教育基本法改悪案採決許されぬ 井上議員指摘 文部科学省が「教育基本法『改正』について、広く国民の声を聞く」として開 いた「教育改革フォーラム」で、タウンミーティングと同様に政府が教育委員 会関係者を一般参加者として動員し、発言させる集団的な「やらせ」が行わ れていたことが十三日、明らかになりました。参院教育基本法特別委員会 で、日本共産党の井上哲士議員が追及しました。 -------------------------------------------------------------------------------- 同フォーラムは二〇〇三年、〇六年に計十カ所で開かれています。井上氏 の独自調査によると、〇三年五月の山口会場では、文科省が「県の職員や 関係団体等から百人程度確保していただきたい」と県教育委員会に口頭で 依頼。同年五月の熊本でも同様の依頼がありました。 東京、香川、石川の三カ所を衛星通信でつないだ〇三年十月四日の場合、 石川、香川の両会場では一般公募がされていませんでした。 井上氏は、香川会場で小学校校長が職業をいわずに発言していたことをあ げ、一般市民から意見を聞いたように偽装していると追及。伊吹文明文科相 は「関係者を集めるのは当たり前だ」などとまともに答弁しない姿勢を示した ため、委員会は一時紛糾しました。 〇三年十月のフォーラムには約三千万円の税金が投入され、衛星通信ネッ トワーク業務には千百四万六千円の費用をかけています。ディレクターに一 人七万五千円など相場の一・五倍以上の人件費をかけています。 井上氏は、この業務を公益法人「衛星通信教育振興協会」が随意契約で受 注していたこと、同協会が文科省の元事務次官や生涯学習局長などの天下 り先になっていることを指摘。「法案の審議はつくされていない。『やらせ』『さ くら』に加え天下り先の利益確保という新たな問題も出てきた。改悪法案を採 決することはできない」と批判しました。 *********************************** 「さくら」65人に謝礼/国が動員71回 タウンミーティング 政府、世論誘導認める 政府のタウンミーティング(TM)調査委員会(委員長・林芳正内閣府副大臣) は十三日、小泉内閣で行われた百七十四回のTMに関する報告書を発表し ました。報告書は教育基本法改定に対する賛成意見などを依頼した「やらせ 質問」について、「『世論誘導』ではないかとの疑念を払しょくできない」と書き、 政府自身「世論誘導」を認めました。 この問題は、日本共産党が最初にとりあげ、追及してきたものです。 報告書では(1)政府側が事前に内容を示して発言依頼する「やらせ質問」は教 育改革、司法制度改革などをテーマにした十五回(2)内容を示さない発言依頼 (「さくら」)は百五回(3)このうち司会者から特に紹介を受けず一般参加者にま ぎれて発言したのが二十九回(4)国から公務員が動員されたのは七十一回と しています。 政府はこれを受け、小泉内閣で官房長官を務めた安倍晋三首相を含め関係 者を処分し、TM再開の準備に入る予定です。 「さくら」発言に謝礼金を支払ったのが二十五回六十五人、開催初期の二〇 〇一年度のTM運営経費は一回平均二千二百万円で、その後の七百万円 ―千三百万円に比べて高額でした。 やらせ質問があったのは教育改革の五回のほか、司法制度改革の六回、 その他四回でした。 そのうち司法制度改革TMの五回(〇四年十二月―〇五年十月)、「大学発 タウンミーティングイン京都」(二〇〇二年十一月)、規制改革がテーマの「日 本改新タウンミーティング」(〇三年七月)では、質問案とともに回答案と回答 者もあらかじめ決めていました。 参加者排除も判明 ずさん会計の実態うきぼり 政府の報告書から、タウンミーティング(TM)の悪質な運営やずさんな会計の 実態が浮き彫りになりました。 二〇○五年十一月二十七日に京都市で開催された「文化力親子TM」では、 内閣府が事前に好ましくないと判断した複数の人物を排除するため、約五十 人を抽選で落としたことが分かりました。 こうした手法に、調査委員の国広正弁護士は「不公正の度合いは極めて高く、 許容できない」と批判しています。 特定の内容の発言を依頼する「やらせ質問」は文部科学省が主導し、内閣府 TM室や法務省もこうした手法を踏襲しました。 ○三年十二月十三日、岐阜市で開催された第一回教育改革TMでは、五人に 「やらせ質問」を依頼し、四人が実際に発言。「やらせ」を行った理由として「教 育基本法改正に反対するもののみが発言する可能性があり、賛否両論幅広 い意見が出るよう配慮」したと書いています。 高額なTM運営経費から、業者任せの実態も判明しました。○二年度前半分 の契約書には、「会場における送迎」「エレベーター手動」「エレベーターから 控室までの誘導」などの項目に、単価二万九千円を計上。調査委員会は「国 民が理解し難く、疑問の多い価格設定」と指摘しています。 *********************************** 教育基本法「改正」 徹底審議を求める 東京大学教員有志が声明 東京大学大学院教育学研究科・教育学部の教員が十三日、参議院議員会館 で記者会見し、「教育基本法改正をめぐる慎重な徹底審議を求める」声明を発 表しました。 記者会見に臨んだのは、苅谷剛彦、川本隆史、佐藤一子、土方苑子の四教授 と勝野正章助教授の五人。声明の賛同者は十三日現在、東京大学教育学部 の教員三十四人のうち、この五人を含め二十三人になります。 声明は、参議院で強行に採決することが、「二十一世紀に国民教育の新たな 発展に大きな禍根を残すことになる」と批判。「改正案は憲法に違反するので はないか」との疑義について、明確な根拠のある説明がいまだなされていな いと指摘しています。 西洋教育史が専門の川本教授は、現行の教育基本法を「西洋教育において 重要とされる、『自由、人格・個性の形成』のエッセンスを表現した法律」と評 価し、数の力で通すことは「断じて許さない」と述べました。 |