参議院での教育基本法「政府法案」の強行採決に対する抗議声明

抗議声明


2006年12月14日
日本教職員組合

本日、政府・与党は、参議院「教育基本法に関する特別委員会」で、教育基本
法「政府法案」を強行採決した。憲法に準じる重要な法律の「改正案」を十分な
審議を尽くさず、強行採決したことに断固抗議する。

教育基本法は、「教育の憲法」であり、すべての教育法規の方向性を定めてい
る重要な法律である。その法律の全部を改正するというのであれば、時間をか
けて慎重に審議をすべきであり、条文ごとの審議は欠かせない。そして、国民
的合意形成が何よりも重要である。多くの国民は、「今の国会にこだわらず、
十分な時間をかけて審議をつくすべき」と慎重審議を求めている。

国民の意見を聞く場であるタウンミーティングでは、「やらせ質問」が発覚し、
問題の原因と責任も明らかにされていない。昨日、内閣「タウンミーティング
調査委員会」の調査結果で「やらせ質問」の事実が公表された矢先であり、
今後、十分な検証を行い責任を明らかにすべきである。国民の理解が得ら
れたという前提がくずれた中で、「まず成立ありき」と数の力で強行採決をし
たことは暴挙であり、断じて許されない。

また、3年におよぶ与党協議会での政府法案上程までの審議内容も未だ明
らかにされておらず、国民に説明責任を果たしていない。

受験競争の激化、学力偏重の圧力の中、教育基本法の理念である「個人の
尊厳」は生かされず、子どもたちの人権・ゆたかな学びが保障されてこなかっ
た。また、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」を踏まえた教
育条件整備も十分に行われることがないまま、子どもたちの教育格差は拡大し
ている。

教育基本法「改正」によって、いじめによる自死など子どもたちをめぐる諸課題は
解決するのかという国民の疑問にも応えていない。教育制度や教育政策の検証
を十分に行うことなく、教育基本法を変えても問題は解決しない。

教育基本法「政府法案」にある「国を愛する態度」の規定などは、価値の押し付け
など「内心の自由」に踏み込み、憲法が保障する「思想・良心の自由」を侵害する
ことになる。

私たちは、「政府法案」の強行採決に断固抗議するとともに、参議院本会議で可
決・成立させるという暴挙を避け、直ちに審議をやり直すよう強く求める。