「教育基本法改正をめぐる慎重な徹底審議を求める」

東京大学教育学部教員有志声明

 衆議院で与党が単独採決をおこない、参議院特別委員会で審議中の教育基本
法改正案は、一両日中にも参議院本会議で採択されると報道されています。

 しかし、この間の国会審議で、世論を反映するといわれたタウンミーティングも大
半が政府の世論誘導の手段となっていたことが明らかにされています。むしろ新聞
等の世論調査でも明らかなように過半数を超える国民が慎重審議を望んでいます。
本年7〜8月に我々が行った全国の公立小中学校校長対象調査(4782校が回答)
でも、基本法改正に反対の校長が、全回答者の64%を占めているという状況があり
ます(東京大学大学院教育学研究科COE基礎学力研究開発センター調査)。100
年の計といわれる教育の基本法について、国民のコンセンサスがえられないまま
に強行に採択することは、21世紀の国民教育の新たな発展に大きな禍根を残す
ことになります。

 政府法案は憲法に違反するのではないかという多くの指摘がなされています。
たとえば教育の目標に愛国心を掲げるなど、教育の名において一人一人の内心
の自由に立ち入るのではないか、という疑義について、なんら明確な根拠のある
説明はなされておらず、教育の国家統制に対する危惧の念は払拭されていませ
ん。

 むやみに採択を急ぐのではなく、疑問や反対の声に耳を傾け、理を尽くした審議
を重ねてこそ、政府として教育への責任を果たすことになります。私たちは、法改
正の理由、改正文言のひとつひとつについて、慎重審議を尽くし、納得のいく説明
がなされるべきであると考えます。

 教育学研究と教育分野の人材養成をおこなう国立大学教育学部教員の立場か
ら、国会における教育基本法改正論議に対して徹底した慎重審議を強く求めるこ
とをここに表明します。
 
              2006年12月13日

東京大学教育学部教員有志 (あいうえお順)
              
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