『しんぶん赤旗』2006年12月13日付

「徹底審議」が国民の声
教育基本法 公述人・参考人が共同会見
アピールに20人連名


衆参両議院の教育基本法に関する特別委員会の参考人、地方および中央公聴会
の公述人の有志は十二日、「公述人・参考人として教育基本法の徹底審議を求め
ます」のアピールを国会内で発表しました。十一日現在で三人の呼びかけ人を含む
二十人が連名しています。

呼びかけ人で元中教審委員の藤田英典国際基督教大学教授は、政府案について
危ぐや問題点を指摘してきた公述人・参考人が、審議のあり方や内容についてアピー
ルを出す事態は極めて異例なことだと強調。政府与党の国会審議に対する態度は
「国民に対する冒涜(ぼうとく)であり、日本の恥である」と批判しました。

「仮に政府案が成立したとなれば、日本の教育や社会の将来に大きな禍根を残し、
さまざまなゆがみを増幅させていく危険性がある」とのべ、参院においての徹底審議
を求めました。

呼びかけ人の西原博史早稲田大学教授は政府案に対し、「もう一度意見表明しなけ
ればならない」と考え、アピールを出したと語り、(1)時間をかけ徹底した審議を求める
(2)国民の意見を十分に聴き、国会審議に反映させる(3)十分な議論がないままの拙
速な採決に反対する―三点を最低限の要求としてあげました。

教育評論家の尾木直樹氏、高橋哲哉東京大学教授、広田照幸日本大学教授、堀尾
輝久東京大学名誉教授、世取山洋介新潟大学助教授も出席しました。

アピールには、石躍胤央徳島大学名誉教授、市川昭午国立大学財務・経営センター
名誉教授(元中教審委員)、岩本一郎北星学園大学教授、大田直子首都大学東京教
授、粕谷たか子静岡県高等学校障害児学校教職員組合執行委員長、喜多明人早稲
田大学教授、土屋基規神戸大学名誉教授、出口治男弁護士、戸塚悦朗龍谷大学教
授、中嶋哲彦名古屋大学教授、中森孜郎宮城教育大学名誉教授、成嶋隆新潟大学
教授、福田誠治都留文科大学教授の各氏が名を連ねています。

***********************************

教育基本法改悪法案
与党 あす採決狙う
共産党など阻止へ全力


終盤国会最大の焦点となっている教育基本法改悪法案について十二日の参院教育
基本法特別委員会理事懇談会で、自民・公明の与党は十三日の採決を断念し、新た
に十四日の締めくくり総括質疑と採決を提案しました。日本共産党と社民党は反対し、
民主党は「正式には明日提案してほしい」とのべました。日本共産党の井上哲士議員
は「審議は不十分であり、採決は受け入れられない」と主張しました。

日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党四党は同日、国会内で国対委員長会
談を開き、政府案阻止のために最後まで全力をあげることを確認しました。

十三日午後には参院教育基本法特別委員会で一般質疑、衆院教育基本法特別委員
会では同日午前に安倍晋三首相出席の集中審議が行われます。

***********************************

教育基本法改定
教育実践とズレ
参院 中央公聴会で学生発言


十二日行われた参院教育基本法特別委員会の中央公聴会で、埼玉大学教育学部の
学生、浅野大志氏(22)は、学生たちは子どもと接し、悩みながら教育実践をしようとし
ているが「教育基本法『改正』が学生の問題意識の解決策になるのかわからない。実
践としての教育と教育基本法『改正』がずれている」と批判しました。

また、浅野氏は、現行法第一〇条の「教育は…国民全体に対し直接に責任を負つて行
われるべきもの」の部分について、「教育は直接向き合っている子どもたちに行うものだ
と感じるので、大好きです」と発言。改悪法案で削除されていることを批判しました。日本
共産党の仁比聡平議員は「私もこの条文が大好きだ」と応じました。

仁比氏は、伊吹文明文部科学相が同委員会で教育基本法改悪法案は「自民党の憲法
草案とも整合性をチェックしている」と答えていることについて尋ねました。大内裕和・松
山大助教授は「立憲主義の根幹を揺るがす大問題だ」と答えました。

また、大内氏は点数至上主義の教育が、子どもたちに過度のストレスを与え、「どうせだ
めさ」という将来の絶望につながる感覚も与えてしまうと指摘しました。

東京都教育委員会の木村孟委員長は、改悪法案の早期成立を求めました。

***********************************

教育基本法改悪
強行採決「許すな」
国会前で座り込み続く


十三日にも教育基本法改悪法案の委員会採決を狙う与党の動きを許さないと十二日、
「教育基本法改悪を許さない各界連絡会」は国会前での座り込みを続けました。雨と底冷
えのする寒さのなか、ビニールがっぱを着込み、傘をさし、「与党の横暴を許すな」「徹底審
議をしろ」と唱和を繰り返しました。

「きょう明日が国会のヤマ場ときき、高松市から来ました」と、連絡会構成の労組や団体以
外からも市民がかけつけました。新日本婦人の会東京・千代田支部の会員たちは「国会前
で座り込むのは初めて。なんとしても廃案に」と語っていました。

主催者あいさつした民青同盟の染矢ゆう子さんは、東京の学校選択制などを目の当たりに
した青年が反対のメッセージを集めるなど教基法改悪反対の声と運動は青年の間でも確実
に広がっていると紹介し、改悪阻止の思いを語りました。

埼高教や都教組、自治労連の代表らが次々と発言しました。

日本共産党の仁比聡平参院議員が、日程をめぐって理事会で与野党の攻防が続いている
と国会情勢を報告。ともに頑張ろうとの訴えに、「よーし」の声が飛びました。

行動提起した全教の長谷川英俊副委員長が、十三日午後六時半から東京・日比谷野外音
楽堂で開かれる中央集会などを呼びかけました。