『高知新聞』2006年12月12日付夕刊

教基法改正反対にスクラム 県内教育長賛成なし


「政府が強制的になったり、内心の自由を侵害することはいかがなものか」
「このような動きに国民一丸となって反対をしていかなければならない」――
戦後民主主義を大きく転換させる教育基本法改正案をめぐって国会で激しい
攻防になる中、県内自治体の首長、教育長からも反対意見や慎重審議を求
める声が多数相次いでいる。この声を県民に広げようと、高知市の街頭では
12日朝、出勤時間に合わせたアピール活動が始まった。

「子どもと教育を守る県連絡会」(西森稔代表)が県内市町村の各教育長の
議会での発言や、会独自の質問に対する回答などをまとめた。それによると、
35自治体のうち「改正必要なし」15人、「慎重審議が必要」12人、「変える理
由が分からない」3人、「改正されても影響はない」1人、「ノーコメント」4人。積
極的賛成は皆無だった。

「政治が教育の内容にまで足を踏み込んで、とやかく言いだしたらろくなことは
ないことは戦前の歴史が証明している。国民一丸となって反対していかなくて
はならない」(春野町)

「戦前のような国家統制による国民にものを言わせぬ教育は絶対に許される
ものではない」(安芸市)

「現行の教育基本法は高い理想を掲げる立派な法律。わたしたちが直面して
いるさまざまな教育課題の原因が教育基本法に帰するとは考えていない」(奈
半利町)

「物言わぬ先生方が増えてくることは、教育長としてできるだけ避けなきゃなら
ない」(南国市)

「わたしの今日までの一生は、教育基本法と共に歩んだ一生。わたしの教師歴
40年に及ぶ教育実践のよりどころが改定されようとしていることは、誠に残念な
極み」(四万十市)

「国を愛する心は、人の心に自然な感情としてあるものであり、これを法制化し、
強制することは不適切である」「改正する必要はないと感じる」(須崎市)

首長の間にも慎重さを求める意見が相次いでいて「まだまだ国民の関心は決し
て高いとは言えず、まだ十分に論議が尽くされているとは言えない」(高知市)、
「教育基本法の改正は憲法改正論議と同列で、わが国の平和と民主主義にとっ
て大きな脅威になると危惧(きぐ)し反対する」(本山町)など。

教育基本法改正法案の論議は15日の国会会期末を目前に控え、松江市のタウ
ンミーティングで文科省の統計数字に疑念を抱いた女性の発言希望を無視してい
た問題が新たに発覚するなど、波紋を広げている。

同連絡会は12日朝、高知市役所そばの電車通り交差点で、反対のビラを配布。
「教育基本法改悪反対」の文字看板を掲げて、ドライバーや通勤途中の人たちに
改正案の問題を訴えた。

「県内の教育長で積極的賛成は一人もいなかった。改定の動きそのものがおか
しい。このことを一人でも多くの県民に伝えたい。15日まで国会審議は危機的な
状況が続く。もっと反対の声を広げたい」と同連絡会事務局の西山潤さん(48)。
今後連日、場所を変えながら、街頭アピールを続けていく予定だ。