『毎日新聞』2006年12月9日付

教育再生会議:競争原理巡り紛糾 中間報告は難航も


政府の教育再生会議(野依良治座長)の先月29日の全体会議で、3月に閣議
決定された「規制改革・民間開放推進3カ年計画」の位置づけをめぐりメンバー
間の意見が激しく割れ、約20分にわたり紛糾していたことが分かった。安倍晋
三首相の仲裁もあいまいな形で終わったという。論争の背景には教員・学校評
価など教育への競争原理の導入のあり方をめぐる根深い意見対立があるとみら
れる。8日行った集中討議でも教員・学校評価は議論の的となっており、来月の
中間報告とりまとめは難航しそうだ。

3カ年計画は、学校・教員評価や不適格教員の排除など、競争原理の導入を文
部科学省に義務づける内容。29日の会議では、議論の「百家争鳴」ぶりを懸念
した渡辺美樹委員(ワタミ社長)が「閣議決定があるならそれをもとに話し合って
はどうか」と提案したが、3カ年計画に距離を置く伊吹文明文科相が「法律だって
必要があれば改正される。閣議決定も議論の結果なら書き直せばいい」と述べ、
拘束されないとの考えを示した。これに対し、競争原理導入派の山谷えり子首相
補佐官が「閣議決定があくまで前提になる」と割って入り、伊吹文科相と激しいや
り取りが繰り返された。

このため安倍首相が「閣議決定には拘束されないが、意識してほしい」と述べ論
争を引き取ったが、メンバーの一人はこの発言を「規制改革の閣議決定にはこだ
わらない」趣旨の発言と受け止め歓迎。「教育論より規制改革を優先するなら、しっ
ぽが犬を振るようなもの」と、競争原理派への反感をあらわにする。一方で、規制
改革論者で規制改革・民間開放推進会議委員を兼務する白石真澄第1分科会主
査は「再生会議は、中央教育審議会(文科省の諮問機関、中教審)の議論も前提
ではないというスタンス」と述べ文科省をけん制しており、首相の指示は、双方から
都合良く解釈されて、火に油を注ぐ形となっている。

再生会議が8日、東京都内のホテルで開いた集中討議でも素案が力点を置く「不適
格教員の排除」に、委員から「教員個人の資質の問題より、教員数を増やしてきめ細
かい指導をすべきだ」と疑念が示された。東大の小宮山宏学長は「再生会議の提案
は、骨太の方針を示すものであるべきだ」との文書を提出し、学校教育の具体論に踏
み込む会議のあり方に疑問をにじませた。【渡辺創】